愛知県碧南市 「狐さんを探せ!」を合い言葉に境内を巡る 伏見「稲荷神社」

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不思議な伏見の稲荷神社

よく探さないと「狐」は現れない 伏見屋新田開発の功労者「三宅又兵衛」

灯籠がズラリと並ぶ参道

<「狐さんを探せ!」を合い言葉に訪れたい伏見・稲荷神社。拝殿前には狐像ではなく一対の狛犬像が鎮座。伏見屋新田開発と同時期に勧請された歴史。独立した参道を歩けば不思議気分> まったくもって不思議な神社だ。元は家下川が流れていたという県道の米津・碧南線。伏見屋交差点から140メートル南下した辺りに現れる「村社 稲荷神社」の石標。 民家と民家の間に幅2メートル、長さ100メートルに渡って参道が西へと続く。ローマ帝国の街道みたく、縁を石組みされた参道には砂利が敷き詰められ、踏みしめる足音が民家の壁に反射し、軍隊の行進を思わせるリズムが響いていく。 6メートル程をアスファルト道に分断され参道終了。新たな鳥居が出現し、その先が境内である。 拝殿へと至る新たな参道には、両側に大小様々な神燈。拝殿直前には一対の狛犬が。 はて?気づかないだろうか? ここは確か伏見の「稲荷神社」である。普通なら狛犬の変わりに狐が鎮座しているものである。 それでは「狐」はどこへ行ってしまったのか? 答えは先ほど通ってきた神燈にある。目立たないように鎮座しているのだ。 どういう意味を持ってこのような仕組みとなっているのかは謎。 この伏見・稲荷神社の場所は伏見屋新田が開発される以前、砂州であったという。 創建されたのは伏見屋新田を開発したのと同年、寛文6年(1666)である。

ひっそりと佇む三宅社

<親子2代に渡って伏見屋新田を開発するも水害との闘いに明け暮れた。最後には排水路確保の目的で新堀川開削の大事業に取り組み、資産のほとんどを使い果たす。三宅又兵衛の開発した伏見屋新田は後の碧南市発展に繋がる礎となる。人々の感謝の意か、社内には三宅又兵衛の肖像画が掲げられている> 稲荷神社の境内。隣にある市立日進保育園からは賑やかな子供の声。自然石が積まれた小山に簡素な社。 屋根には「二階傘」の紋章が飾られる。昭和34年(1959)に建立された「三宅社」。 祀られているのは伏見屋新田を築いた「三宅又兵衛」である。伏見屋とは初代・三宅又兵衛が京都の伏見に住んでいた事からの屋号「伏見屋」が由来。 伏見屋新田は寛文11年(1671)に2代目・三宅又兵衛が完成させた。 中山の小田甚兵衛から話を受け、将来性を見越してのことだった。しかし現実は上手くいかず、 度重なる水害との闘いの歴史が続く。特に3代目・三宅又兵衛が跡を継いでからは宝永2年(1705)から続いた災害により、 宝永6年(1709)には返地を願い出ているほど荒れ果てた。水害対策となる新堀川(現在の新川)開削を成功させるため、 三宅又兵衛は新田を売ることに。新堀川の完成を見届けてからこの地を去った。 親子2代に渡る三宅又兵衛の貢献は現在にみる碧南市の発展に深く寄与した。

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三宅又兵衛(みやけまたべえ) 初代・三宅又兵衛は京都伏見に生まれ、屋号を伏見屋といった。豊臣秀吉から御朱印をもらい、文禄元年(1592)からベトナムと貿易を行い、財を成した。 江戸幕府が開かれると江戸に移り、幕府御用達を勤め政商となる。ちなみに「三宅」の姓は徳川家康に京都・大阪・江戸に土地を貰い、屋敷を建てたことから。 2代目・三宅又兵衛は寛永8年(1631)に生まれ、池廻り・海表の伏見屋新田を開発した人物。元禄2年(1689)、58歳で没。 3代目・三宅又兵衛は伏見屋新田の保全に尽力し、新川開削にも奔走した人物。新川完成を機に江戸へと帰る。

ヘボト自画像ヘボトの「如是我聞(にょぜがもん)」

伏見墓地の地蔵堂前

「チンチン叩き」

伏見の稲荷神社鳥居前を南下すると左手に伏見墓地が見えてくる。 毎年お盆の3日間に、この伏見墓地で「チンチン叩き」という風習が行われる。 墓地中央にある「十福圓満」と額にある地蔵堂前には仮設テントが張られ、なにやら儀式が始まる雰囲気。 日も暮れだした夜7時、テント下では4名の当番者が地べたに座り、「チンチンチン~」と鐘を叩く。 盆参りに訪れた人々は次々と当番者をねぎらい、賽銭を置いていく。一通り賑わいも終えた頃には夜8時を過ぎていた。 墓地であるからして人の顔も分からぬほど辺りは真っ暗。地蔵堂にある蝋燭の煌々とした灯り、チンチン~と鐘の音だけが鳴り響く。 明治11年(1878)頃より、地蔵様への感謝と盆供養の一環として始まったとされるチンチン叩き。 幾度と水害に遭い存続の危機に陥った伏見屋新田。決して屈することのなかった人々の歴史が、ここにはある。

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