愛知県碧南市 センチメンタルな雰囲気が漂う売店とウォータースライダーの話

マンモスプール最後の日

売店とウォータースライダー

売店に漂う感傷的な雰囲気 ウォータースライダーにお尻丸出しの思い出

<プールには30人ほどの客しかいない。万国旗の連なる売店には6グループの家族連れ。店の売り子や店主からは溜息や涙めいた話が聞こえてくる。子供の頃に食べたハンバーガーやホットドックは何故か美味しかった…と甦る記憶。今日という日が最後だと実感させられる雰囲気> 雨なのか曇りなのか、ハッキリしない天気がここ数日続いていた。 衣浦マンモスプール最終営業日となる今日、8月17日の日曜日だけは晴れていて欲しかった。 管理練の屋上にあるテラスより眺めたプールには、30人ほどの客しかおらず、閑散としていたことが何とも淋しい。 私にある四半世紀前の記憶には、たとえ小雨降る天気だろうと、終了時間ギリギリまで子供達は騒いでいたものだ。 水着でない私はテラスから階段を降り、売店の並ぶエリアへと足を踏み入れた。 黄色いテントには万国旗と共に「ハンバーガー・焼きうどん・たこ焼き」といった看板がぶらさがる。 寂しさ漂うテーブル席にも小さな子供を連れた家族、6グループほどが今日一日の余韻を楽しんでいた。 店の売り子や店主は、黙々と作業をする人、少し目を潤ませている人、ボーと立ち尽くし感慨に耽る人と様々。 彼らの姿に「ああ、本当に今日でマンモスプールが終わるんだな」と実感させられた。

<思い出のウォータースライダー。頂部へと続く階段からドキドキした思い出。「オレ、やめる」と言い出すヤツも。50メートルの滑落から豪快な水飛沫をあげてやってくる友人。お尻丸出しの姿にゲラゲラと笑う友達の輪。夏の思い出に一役買ってくれたウォータースライダーも今日で見納め> 「愛知県プール条例により水着以外の方はプールサイドに入れません」の警告板が四半世紀ぶりに再会した私を無情にも拒む。従わなくてはなるまい、これは規則なのだ。 恨めしそうにプールサイドを眺めていると、服を着たまま歩いている人の姿がチラホラと見える。スタッフか?と凝視するが、その動きは一般人の類。 どうやらイベントの関係で特別に入り口を開放しているようだ。 ぜひ間近で見たいものがあった。50メートルのレーンを誇るウォータースライダーである。 定かな記憶ではないが、確か昭和56年(1981)頃に完成したような気がする。 50メートルのレーンが2つ、30メートルのレーンが3つとあり、50メートルのものは2つの段があり、そこで体がふわっと浮くようになっている。 初めて滑る時には頂部までの階段が怖くて、「やっぱりヤメる」と言い出すやつ、いざ辿り着くとその高さに腰が引けて奇妙な動きをするやつがいたことを思い出す。 豪快な水しぶきをあげて帰ってきたやつには、仲間の嘲笑が待っている。摩擦で水着が脱げ、お尻が丸出しなった姿をゲラゲラと笑う。 なかには水着の腰ひもが切れて全裸になるやつも。

ヘボト自画像ヘボトの「忘れないよ、あの夏の日々」

バーを利用した回転扉

「消毒漕の思い出」

マンモスプールでは、消毒漕を通らなくてはプールサイドに行くことは出来ない構造になっていた。私はマンモスプールの消毒漕だけは子供時分に好きになれなかった。 更衣室から直にプールサイトへと行ける消毒漕は小さな子供にとっては腰上まで来る深いものだったと記憶している。 しかも随分と水は冷たく、ブルブルと体に震えが来てしまうほど。消毒漕には、ちゃんと入ったかどうかを凝視する監視員が側にいて怖かった。 少しでもズルをしようものなら、「はい、ちゃんと胸までゆっくりと入る!」と叱咤される。 だから売店とプールサイドを隔てる回転扉を通過すれば、その日は帰ると決めていた。 なぜならもう一度、消毒漕を通らなくてはならないからだ。火照った体に冷たい刺激は酷である。

< text • photo by heboto >


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