| 顰に倣う(ひそみにならう) | ことの良し悪しを考えず、やたらに人まねをする こと。 |
春秋時代、越の国に西施(せいし)という美しい女性がいた。
西施は胸が痛む持病があった。ある日、また発作が起きたが、
彼女が胸元を押さえ、眉間にしわを寄せた姿にはなんともなまめかしく、
か弱い女性の美しさがにじみ出ていた。彼女が里から歩いて来るその様に、
里の人たちは皆目が釘付けになった。
里に一人の醜い女がいた。名を東施(とうし)という。
この日、西施が胸元を押さえ、
眉をひそめた様子にたくさんの人が見とれているのを見た東施は帰ってから、
西施のまねをして、胸元を押さえ、眉をひそめて、村の中を行ったり来たりした。
図らずも、この醜い女が大げさ振る舞うとただでさえ醜い顔がもっとひどくなった。
だから、この女の奇怪な様を見ると里の金持ちは、すぐにドアをぴったりと閉め、
貧乏人は妻や子を連れて遠くに逃げるといった具合であった。
西施のまねをして、奇怪な様で村の中を歩き回る東施を見て
、皆まるで疫病神にでも会ったかのようであった。
この東施は西施が眉をひそめた様子が美しいということだけはわかったが、
なぜ彼女が美しいのかはわからなかった。むやみに人のまねをするのは愚かなことだ。
【荘子・天運】