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鶏口牛後(けいこうぎゅうご)

意味:たとえ小さな集団であっても、その中の長となる方が、大きな集団の末端となるよりもよいことのたとえ。
「鶏口」は鶏のくち、頭。「牛後」は牛の尻。牛の肛門とする説も。

戦国時代、蘇秦(そしん)は各国を回って、それぞれの国が同盟して秦に立ち向かう合従策を説いた。 燕王、趙王を説き伏せると、蘇秦はさらに合従をとりまとめるべく、韓に入った。 韓の宣王(せんおう)に、韓の兵は強く、王は賢者なのに、秦に屈従するのは、国の恥であるばかりか天下の笑いものになると説いて、さらにこう言った。

「王様が秦に仕えれば、秦は必ず宜陽(ぎよう)、成皋(せいこう)を欲しいと言ってくるでしょう。 今年、土地を割いて与えれば、来年もまた割譲を迫るでしょう。 与えれば、もはや与える土地がなくなり、与えねば、今までのことは無駄になって、さらにわざわいを受けます。王様の土地は限りがあるのに、秦の要求はやむことがございません。 限りある土地で、とまることのない要求に応えようとするのは、恨みを買い、禍を結ぶというもの。 戦わずして、土地は削られます。ことわざに、『むしろ鶏口となるとも牛後となるなかれ』と申します。 今、西を向いて手を合わせ、秦に臣服するのは牛の尻になるのと何の違いがありましょうか。王様の賢明さ、韓の強勇な士卒がありながら、牛の尻と呼ばれるのは、恐れながらわたくしは王様の恥辱であると存じます」

すると、韓王はにわかに顔色を変え、腕まくりをして、目を見開き、剣を押さえて、天を仰ぎ嘆息していった。

「わしはふつつか者だが、決して秦につかえることはできぬ。今、御身がお伝えくださった趙王のお言葉に国をあげて従いましょう」

こうして蘇秦が諸侯を説いて回り、趙・魏・韓・燕・斉・楚の六国は同盟を結んだ。蘇秦は同盟の長となり、同時に六国の宰相も兼ねた。合従の同盟が保たれていた十五年間、秦が六国に対して撃って出ることはなかった。

【史記・蘇秦列伝】

※合従策(がっしょうさく)・・・六国が南北に同盟して秦に当たろうとする策。


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