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推敲(すいこう)

意味:文章・詩などの辞句を十分に吟味して練ること。「推」は押すこと。「敲」はたたくこと。

賈島(かとう)が科挙の試験を受けるために都へ出てきた。 驢馬に乗りながら詩を作っていたところ、「僧ハ推ス月下ノ門」という句を思いついた。 「推」を「敲」に改めようかと思った。 手で推したり敲いたりする身振りをして考えたが、なかなか決められずにいた。 すると、うっかり都の長官韓愈(かんゆ)の列にぶつかってしまった。 そこで、賈島はぶつかってしまった理由を詳しく話した。韓愈は言った。

「『敲』の字が良かろう」

とうとう、二人は馬首を並べて進みながら詩を論じ合った。

【唐詩紀事・賈島】

※科挙(かきょ)・・・官吏登用試験。隋の時代に始まり、清朝末まで約千三百年間続いた、官吏採用の制度。

※賈島がこの時作ったといわれる詩


[原文]
題李凝幽居

閑居少隣並 草径入荒園
鳥宿池辺樹 僧敲月下門
過橋分野色 移石動雲根
暫去還来此 幽期不負言


[書き下し文]
李凝(りぎょう)の幽居(ゆうきょ)に題す

閑居(かんきょ)隣並(りんぺい)少なし 草径(そうけい)荒園(こうえん)に入る
鳥は宿る池辺の樹 僧は敲く月下の門
橋を過ぎて野色(やしょく)を分かち 石を移して雲根(うんこん)を動かす
暫く去って還(ま)た此に来る 幽期(ゆうき)言(げん)に負(そむ)かず


[解釈]
李凝の幽居に題す

静かな住まいには近くに住む人も少なく、草の茂った小道は荒れた庭に続いている。
鳥が池辺の樹の上に宿り、月明りの下で僧は門をたたく。
橋を過ぎると野原が二手に分れ、石を踏みながら進むと立ちこめた霧が揺れ動く。
暫く去ってまたここに戻ってこよう、一緒に隠居して静かに暮らす約束を破ったりしない。

※僧・・・賈島自身を指すとも
※第三句については管理人の好みで、上記解釈を採用していますが、「橋を過ぎると心惹かれる原野が現われ、低く垂れた雲が風に吹かれて動いているのはまるで山の石が動いているかのようだ。」との解釈もあります。


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