病膏肓に入る（やまいこうこうにはいる）

晋の景公が病気になった。秦に医者を派遣してくれるように頼んだ。秦の桓公は緩（かん）という医者を遣わした。医師の緩がまだ到着せぬうちに、景公は夢を見た。それは病が二人の子供となって話しているというものだった。

｢そいつ、すごい医者なんだってよ。おいら達、ひどい目に会わされないうちに逃げようか｣

「なあに、肓の上、膏の下にいれば手出しできないさ」

医者が到着した。

｢この病は手の施しようがございません。病巣が肓の上、膏の下にあり、灸を用いても効かず、針を用いてもとどかず、薬を飲んでもその効力はそこまで達しません。手立てはございません｣

景公は

｢良医である｣

と言い、厚く礼をして帰した。

【春秋左氏伝・成公十年】

※膏・・・心臓の下部。
※肓・・・横隔膜の上部。