鶴吉大明神

昔、今の美保町四丁目(現在の本町六丁目)のあたりに、樋呑(ひどんと読むのが正しいのですが、ひいどんとかひいどという人も多いようです。)の鶴吉さんというたいそう賢い狸がいました。

 この狸は、かにが大好物で、近くの川でよくかにをとって食べました。また、かにで魚を釣るのも上手でした。漁師がかにを持って行ってやると、非常に喜んで何でも願いごとをかなえてくれました。とりわけ、漁師の大漁の望みをかなえてくれることが多かったそうです。

 また、台風がやってくる気配がある時には、漁師の家に知らせまわって被害を未然に防いだともいわれます。

 このように功徳の多い狸であったので、里人は鶴吉大明神として、小さな祠を建てて、てい重にお祭りしました。いろいろ願いごとをかなえてくれるといわれ、参詣人も多いそうです。

 なお、真偽のほどは別として、鶴吉大明神の姿らしきものを見た信者もぼつぼついるそうですが、いずれも白髪白ひげの老人であったということです。

(大沢文夫著 今治地方の伝説集 より)

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