イタリアの紅い華

 国産車では今のところ、どう逆立ちしてもマネできない(マネする必要も無いのですが)クルマがイタリアにあります。伝統に裏打ちされた独特の色気とオーラを放つアルファ・ロメオ。新作を出す度に話題を集める大胆なデザインは老若男女を魅了します。そしてまた、古ければ古いなりに、ワインのような味わい深い渋みを感じてしまうのはナゼなのでしょう・・・。

 
 ある時、誰が見ても美しいと思えるアルファ156の3日間貸し切り試乗キャンペーンを新聞広告で知りました。3日間も自由に乗れるなんて滅多にないチャンス!!と応募してみたところ、なんとラッキーにも抽選に当たってしまったのでした。我が家に2泊3日でやってきた憧れの真紅のアルファ・ロメオ。もうVIP扱いです。子供たちも大喜び。シートは堅すぎず柔らかすぎずいい感じ。乗り心地はフランス車とはまた違った滑らかさ。主に夫に運転してもらいましたが、やはりこれも面白い!と嬉しそう。私も少し運転してみました。ミドルクラスでありながら、随所にイタリアらしいどこかヤンチャな部分を隠し持っている雰囲気がたまりません。そしてイタ車ならではのちょっと高めのエンジン音。F1などでもフェラーリが出すサウンドは他のものとははっきり違うことがわかりますが、実際にイタリア車と関わるようになってから、こんな普通乗用車でもやっぱり高めの音なんだなと感じることがよくあります。

 
 この3日間を目一杯楽しもうと、近くの山道をドライブに行ったりもしました。その時、偶然にもそこの展望台でアルファ155乗りの方と出会い、少しお話させてもらうという嬉しいおまけも付いてきました。その方はその方で、やはり155にぞっこん惚れこんでいらっしゃるご様子。照れながらもその魅力を熱く語ってくださいました。

 
 何かにつけ、やっぱりちっちゃな下駄グルマとはわけが違うわ〜と感心することしきり。・・・でもね、何か落ち着かないんです。もちろん借り物という事もありました。長年、小さいクルマに慣れ親しんできたせいもあります。どこか着慣れない服を着ているかのような感覚をおぼえながら乗るうち、今回悟ったのは、「分相応ってやっぱりあるよね。」ということでした。イタリアでは、必要以上に格好良く見せたいだとか、それを選んだ確固たる理由もなく、ただ見栄えだけという様を「スッド!」、つまり田舎者といった意味で呼ぶのだそうです。こういうイタリア人の感覚、なるほどなーと思ってしまいました。もちろん156そのものは外見も中身も素晴らしいのですが、私たちの方がもともと貧乏性なのか、どうもしっくり来ない。いざ所有してしまえば、きっとどんどん愛着が増していくことは間違いないと思うのですが・・・。これはステイタスといったことだけでなく、乗り手の風格や年齢も関係していると感じました。人格と車格のバランスとでも言いましょうか。このアルファ・ロメオを乗りこなすには、私たちはまだまだ青二才だということを思い知らされたのです。高いブランド品を10代の女のコが持っていても、どこかチグハグなのと同じですね。こういうオトナなクルマを嫌味でなく、さりげなく乗れることが本当の「お洒落」だというのが、夫と一致した意見です。それを身を持って感じることができ、とても良い収穫となった試乗でした。またこういうキャンペーン、やって欲しいな。