「穴」HOLES ルイス・サッカー著 幸田敦子訳 講談社発行

 この手の表紙を手に取る事は先ずない、しかもタイトルが「穴」である。表紙見出しを読んでもちっとも読む気が起こらない、でも借りてまで読んだのは、本屋で並ぶこの本の帯に「ニューベリー賞受賞」とあったからである。図書館で借りる時はもうその本の帯は取られてる事が多いので、賞を取ったかどうかを確認しながら借りる事は出来ないのが普通である。

 いや、ほんとよかった!傑作なのである。本屋で確認してよかった、そうでもしなけりゃ一生読まなかったかも、だからもっと晴れ晴れとした表紙にすればいいのに(余計なお世話かい?)この私の先入観がなければこのサイトにも埋もれた傑作を紹介できるってものだ。いやそんな事はどうでもいい、とにかく傑作なこの本を私の感想は無視して先ずは読んでみよう!

 主人公は児童書の世界には珍しいデブの少年、ああこの「デブ」だけで私の中の想像力を減退させる、偏見に満ちた自分を押し込んで読むとこの少年スタンリー・イェルナッツの憎々しいかっこよさと想像力のよさ、代々同じ名前をひいひいおじいちゃんから受け継いだスタンリーの名前は本当は「スタンリー・イェルナッツ4世」なのだ。受け継いだ物は名前だけに限らない、「まずい時にまずい所に居合わせる」のも受け継いできた為に、スタンリーはやってもいないスニーカー泥棒の犯人にさせられ、少年院に送られる、そこは砂漠のど真ん中、灼熱の熱さの中の少年院の作業は毎日毎日「穴」を掘る事であった!この「穴」こそこの物語のキーワードの一つなのである。いやキーワードはこの作品中に沢山盛り込まれていてほんとに楽しい作品なのだ。

 

脱線追加記事)

 

作品中に出てくるキーワードの一つ「黄斑とかげ」を探してみした。

ほんとに存在するのか?黄斑とかげのように毒のあるとかげは全世界3000種類の中のたったの2種類しかいない、その一つがアメリカ毒とかげである。このアメリカ毒とかげは北アメリカの南部から中央アメリカにいて作品の舞台のテキサツにいたのかも怪しい。しかも!とかげに噛まれて人が死に至る例はごくまれで黄斑とかげのように俊敏に動く毒とかげはいないようである。(世界大博物館図鑑・平凡社発行参考)

 

 

※表紙掲載許可は、講談社さんより得ています。(2004年3月9日)