「ゴースト・ドラム」《北の魔法の物語》The Ghost Drum スーザン・プライス 金原瑞人訳
ベネッセコーポレーション発行
魔法使いや妖精が出てくる話は児童書の世界には沢山ある。ましてや動物が語り始めると言うツネタの中のタブーに挑戦するかのようにこの物語は猫を語りべとしてスタートする。
スーザン・プライズは、最初の1ページ目ですでに読者の心をキャッチするのが上手い。
まだ奴隷制度が横行する皇帝がおさめている国、一年の半分が冷たい冬に覆われるこの国の中で奴隷の女が子どもを産む、そこに魔女が現れ「この娘がこの世に生まれるのを100年待った」と・・・奴隷女は泣く泣く娘を手放す、奴隷が産んだ子どもは生まれても皇帝の物、一生奴隷で過ごすならば魔女に託したほうがまだましである・・・・
そしてこの魔女に育てられる娘 チンギスの話と皇帝の息子の話と同時進行して物語は進む。
皇帝の息子として生まれたのに、その息子サファは、皇帝が自分の地位を息子にいつか奪われるのを恐れ皇帝ギドンの宮殿の中のもっとも高い塔に閉じ込められ、皇子サファは奴隷の女マライアンが必死になって育ててきたのである。
ある日サファの叫びを聞きつけたチンギスが孤独な塔から出してやる。魔法使いの弟子として、皇帝の死後を治めた女帝マーガレッタやチンギスを嫌う魔法使いクズマとの醜い争い、それらをはね除けるような、また重く受け止めてしまうような作品展開が始まります。・・・すまん上手に表現できないが傑作であるのは間違いない!
1987年度 カーネギー賞受賞作品
脱線追加記事)
作品中に「ストーブに座る」という表現があるが、ストーブに座れるのか?ストーブの歴史を調べましたが「座れるストーブ」で検索してもヒットしなかった。アンティークストーブで検索するとヒットが!見ると座れそうなのもある!しかし座れると言っても座る者はいなさそうだ。魔女だからすわれたのだろう、人間だったら火傷するに決まってる。