想い出〜あの時あった出来事〜
Memory2.ある雪女の想い出“時の彼方のファースト・スノー”
-4-
・・・
「どうかされましたか、お母様?」
娘の言葉に、つららははっと気が付いた。つい物思いにふけってしまったようだ。
「ちょっと・・・昔のことを思い出していたの・・・貴女があの子くらいの頃のことを・・・」
氷雨がつららの視線の先を見ると、娘の月乃が孫の綾奈と雪遊びをしているのが見えた。
「わたしが綾奈くらいの・・・?」
訝しげにつぶやく氷雨の様子に、つららは微笑んだ。
「月乃は幸せね・・・一生をともに歩んでいけるひとと一緒になれたんですもの」
願わくば、綾奈もそんな幸せを掴んで欲しい。
雪女の里の長は自分の孫たちの姿を見ながら、心からそう思うのであった。
〜終〜
-あとがき-
今まで数作の短編を書いてきましたが、今回はこれまでで一番長い作品となりました。
そこで作品補足も兼ねて、あとがきを記しておくことにします。
今回の主役は雪女の里の長、つららの若き日の話で、Nights版「雪女」の話です。
雪女の日奈を看板娘にして早5年、ここらで雪女らしい話を書いてみようと思ったのですが、
さすがに現代日本を舞台に、日奈のキャラクターで由緒正しい雪女の話を書くのは結構大変。
おまけに日奈には小さいころから兄がぴったりくっついていて、他の男をからませるのが難しい。
まぁ、日奈が主役じゃなくてもいいか、と別のキャラを探してみましたが、
月乃は信之とくっついてるし、星香も日奈同様、小さいころから姉といつも一緒。
日奈の母・雪姫の夫は普通の人間ではないので今回の話には不適当。
そこで残ったつららと月乃の母・氷雨に今回はスポットをあててみました。
怪談の「雪女」では、雪女は約束を破った男の他、何人も人間を殺めてしまっていますが、
つららに人を殺させるのがどうしてもできず、最初の一人のみしか殺めていません(それも猟師を守るため)。
多分、伝承から生まれた雪女だったら容赦なく殺していたんでしょうが、
先代の長・雪華という母と人間の父から生まれた2世代目コーディネーター雪女のつららは
約束を破ることに対する強迫観念が弱かった、ということで。
最後の方まで主役の雪女が誰か分からない書き方は、昔話らしさが出せてよかったのではないかと思います。
#うちには何人も雪女がいますから、誰の話か予想できなかったのでは?
これまで名前くらいしか出ていなかった氷雨も登場しましたし、
彼女には綾奈のお祖母ちゃんとしてこれからも顔を出してもらいたいと思います。
次回のLibraryの更新は、「雑談」か「Sweet」の続編、もしくは「名作劇場」の新作か、
意表をついてまたまた「想い出」を書き上げる予定です。お楽しみに☆
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