23.微小な光で部分放電を検出

 電圧を加えて絶縁破壊を発生する前に、絶縁破壊に至らない小さな放電である部分放電が発生します。以前はコロナと言いましたが、今は言わなくなっています。この部分放電を測定する方法で、放電時に発生する微小な光を検出する方法があります。それはイメージインテンシファイアー(II、光倍増管)を用いる方法です。

 小生が初めてIIを見たのは1983年の高電圧技術グループに入って直ぐのことです。当時はUHVの開発がひと段落して、直流送電のための機器開発が進められていました。そうした中、空気中に棒対平板電極の構成で、棒側にマイナスの100 kVの電圧を印加して暗流が流れた状態がIIでどのように見えるかのデモをしていました。肉眼では何も見えなかったのにIIを通して見るときれいな円錐状に光っていました。マイナスの電圧を加えた電極から電子が放出され、放出された電子が加速されて空気中の窒素分子と酸素分子に衝突し、エネルギーの高い励起状態になった窒素分子と酸素分子が元の状態に戻る際に光を放出します。この光を100万倍に増幅して観測したものです。

 このIIは新月で星の微小な光しか無い、肉眼では全く見えない状況で敵の侵入を監視する暗視装置で、中東戦争でイスラエル軍が開発したものだとのことでした。価格は20万円と聞いたような記憶があります。

 このデモ以降、部分放電が発生するけれども場所が分からない場合やどの様に放電しているかを観測する場合には、頻繁にIIを使って実験をしていました。今では暗視装置として非常に安く手に入るようです。

2025年08月08日