コラム

所長のコラムです。

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63.シロアリはなぜ隠れるのか

 

 以前住んでいた家で庭に花鉢を置く木の台がありました。ある時ふと見ると一部が非常に薄くなっており、触ると簡単に折れてしまいました。その木片の中が空洞になっていたので振ってみるとシロアリがでてきました。

 良く床下で見かけると大変であるとテレビのCMで見かける真っ白で3~4 mmの体長でした。シロアリはあわただしく歩き回りますが、驚くことに黒アリと出会うと一瞬にして肉団子にされて運ばれていきました。体長が3~4 mmの黒アリだけでなく1.5 mm位の小さな黒アリに出会っても一瞬にして肉団子にされてエサとして持って行ってしまいます。

 このように黒アリに出会うようなことがあれば全滅してしまうため、黒アリに見つからないようにするために木の中に薄い表面の木を残して穴を開けたり、土を盛って中と外を分けて隠れる必要があると思われます。

 シロアリがいないか床下を無料で調べますという業者がいましたが、ビンボケで黒アリを写真に撮ってシロアリと言い張る悪徳業者がいて閉口しました。そもそもシロアリを見たこともない人が床下に潜っても見つけるわけがありません。

 シロアリの通路を壊してそこにシロアリが写っていなければ全くの嘘です。また、他で撮影してきた床下のビデオを見せる可能性もありますので、当日の新聞を渡してそれを床下で一緒に撮影してもらう必要もあります。

2026年05月18日

62.セルフのガソリン給油での危険性

 

 2026年5月9日の25℃に近い気候でも静電気でガソリンが引火して火事になったとの報道がありました。ガソリンは静電気の放電のような小さな放電でも引火することが知られています。

 人体に貯められた静電気の電荷Qが指先と自動車との間に発生する静電容量Cとなった時の電圧VはQ/Cで決まります。この際、電圧が「3.コンセントの電圧はなぜ100 V(パッシェンの法則)」で記載したように320 V以上で放電する可能性があります。

 セルフのガソリンスタンドでおいて、この放電を防止するために体に貯められた静電気を取り除くために徐電のための電極が給油機にあります。
人間の抵抗は、手のひらと足の裏は乾いた状態でそれぞれ1 kΩと言われています。ガソリンに引火するような指先からの放電する わずかに痛みを感じるのは4 kVとされています。(人体の帯電防止対策:https://www.jstage.jst.go.jp/article/safety/20/6/20_368/_pdf)

 人体が立っていて足裏の面積が0.03 m2で靴の厚さ2 mm、靴底の比誘電率が3とすると対地間の静電容量は約700pFとなります。一方、人間と自動車との間の静電容量は、人間の面積を1 m2で距離が30 cmとすると約30 pFとなります。合計で約1000 pFとして計算すると、この状態では4 µCが溜まっていることになります。衣服の摩擦で発生する可能性のある47 kVから放電が発生する限界の320 V以下まで減衰するためには時定数の5倍を必要とします。人体と対地間の静電容量C(1000 pF)と手のひらの抵抗R(1000 Ω)の積である時定数は1 µsであるので、ちゃんと手のひら全体で接触させれば5 µs以上は必ず接触するので十分であることが分かります。

 問題は自動車のガソリンの給油口を開ける直前に静電気の電荷を逃がす必要があります。一方、私は危険物乙種4類の資格を持っていますが、未だに自分で給油するのは怖いのでセルフのガソリンスタンドを利用することはほとんどありません。

(2026年5月18日に一部加筆修正しました。)

2026年05月11日

61.ファインバブル安定化の謎を電気学会 論文誌Aで解説

 

 「54.ファインバブル安定化の謎を解明」で説明したように、2025年4月に気づいたアイデアの計算を始め7月には査読論文をまとめました。これが2026年5月号の電気学会 論文誌A(基礎・材料・共通部門誌)、第146巻、第5号、pp.193-200に掲載されました。タイトルは「水中で直径100 nm付近の気泡が安定する機構の考察」です。

 内容を簡単に説明します。ファインバブルは-30mV~-45mVに帯電していて、お互いにこの負電荷で反発し付着することなく安定していることが観測されています。-30mVや-45mVに対応した電荷は小さく、この電荷に対応した膨張力は、水の表面張力よりも圧倒的に小さいため、泡は圧縮されて約30気圧で安定するということが通説でした。しかし、泡が消滅する際の衝撃波が発生して汚れを落とすと言われていますが、泡の圧力が30気圧のような高圧力では急激な消滅が起こることは困難です。真空であれば消滅する際にキャビテーションによる衝撃波を出すには泡が真空である必要がありました。他にいろいろな仮説があり検討しましたが無理があると思われます。

 これを解決する仮説として、泡の表面には表面張力と同じくらいの膨張力を示すだけの大きな負電荷が存在するが、泡の直ぐ近くに正電荷があると見かけの泡の電位は小さくなる上に真空の泡ができることが計算上明らかになりました。一方、高気圧の泡もできます。

 高気圧の泡は短時間で溶けて無くなってしまいます。一方、真空の泡は直径100nmより大きな泡は上昇して無くなり、直径100nmより小さな泡は100kV/mmより高い電界により電荷の安定性が崩れて消滅することになり、結局直径100nmの泡が残り長期間安定することになります。

2026年05月02日

60.雷インパルス電圧発生器の原理

 

 「59.標準雷インパルス電圧の波形」で触れた立ち上がり時間についてです。標準雷インパルス電圧では30Vと90Vの点を基準に決めています。一方、電子回路等で決める立ち上がり時間ですが、先の例でいえば10Vと90Vの点を用いています。

 どうしてこのような差があるのでしょうか。この差は、雷インパルス電圧発生器の構造に起因しています。

 例えば公称1000kVの雷インパルス発生装置では100kVのコンデンサを10個用いたとします。この10個のコンデンサを並列に100kVまで充電します。充電が完了したところで、10個の球ギャップを放電させることで直列にする回路を作って1000kVを発生させます。この球ギャップが同時に放電を開始すれば、発生する雷インパルスはきれいな立ち上がり特性を示します。

 しかし、球ギャップが同時に放電をさせるのは技術的に難しいため放電の発生にばらつきが生じます。このため雷インパルス電圧の最初は往々にして大きな振動波が重畳されます。この振動が収まるのがピーク電圧の20~30%のところが多いため、10%では何度も交差するため決められないことが発生します。そこで振動が収まる30%のところを用いることになったようです。

 これもIECの参加メンバーが困らないところで決めることになったと予想されます。

2026年04月27日

59.標準雷インパルス電圧の波形

 

 現在の標準雷インパルス電圧波形は1.2/50 µsです。

 横軸が時間、縦軸が電圧の図を考えます。雷インパルス電圧のピーク電圧が100Vであるとすると、1.2/50 µsの1.2は、雷インパルス電圧の波形で最初に30Vの電圧になる点と90Vになる点を直線で結び、電圧が0Vと交わる時間が基準となります。この0Vの点から100Vになるまでの時間が立ち上がり時間で1.2 µsという意味です。1.2/50 µsの50は、基準から雷インパルス電圧のピークである100Vから低下して50Vになるまでの時間が50 µsという意味です。

 60年前に電力網の発達と共に雷による被害が増えたため、その対策が必要になり世界的に雷インパルス電圧の研究が流行しました。当時作られた日本の雷インパルス電圧発生器の電圧波形は1.0/40 µsです。これは当時アメリカ合衆国での規格に基づいて作られたものです。雷の研究がアメリカ合衆国より導入されたためこの波形になるように作られています。

 ではどうして現在の標準雷インパルス電圧波形は1.2/50 µsなのでしょうか。当時はEU(ドイツ)では、標準雷インパルス電圧波形は1.5/50 µsでした。IECの委員会で1.0/40 µsと1.5/50 µsの間を取って1.2/50 µsになったとハウスシールド氏が言っていました。

2026年04月20日
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