コラム

所長のコラムです。

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56.詳読・速読・積読

 

 「詳読・速読・積読」は大学時代に所属していたクラブの顧問であった流動帯電で有名な電気学科の上田実先生から聞いた本の読み方のお話です。

 3年生になった時にエネルギー変換工学の上田先生の講義を受講したときのことです。エネルギー変換工学の講義の内容はほとんど覚えていませんが、先生が雑談として「詳読、速読、積読」のお話を何故か今でも覚えています。「じっくり内容を吟味して理解するのが詳読であり、時間が無い時にざーと理解するときには速読、君たちのような学生には電気学会の論文誌を読んでも分からないだろうから積んでおきなさい。必要になった時に詳読して内容を理解すれば良い。」という内容であったと記憶しています。

 どうして今それを思い出したかといえば、まさに積読を実践したからです。ファインバブルの検討をするにあたり、バブル上の表面に電荷が溜まった場合の膨張力とバブルの電位の計算を検討するにあたり、定期試験をパスするためだけに買って46年間積んでおいた電磁気学の本2冊が非常に役に立ちました。改めて詳読・速読・積読の重要性を認識しました。

 しかし、現在 論文誌は基本的に電子ファイルになったので、積んでおけなくなり溜めておくので「詳読・速読・溜読」になってしまうのでしょうか。

 当時の他の先生の講義でも内容よりも雑談の内容を今でも覚えていることから、講義における雑談の重要性を認識していたので、自分で「電子物性論」、「電気材料」、「高電圧工学」の講義をする場合には学生に役立ちそうな雑談をいっぱい話しました。

2026年03月29日

55.釜石での不思議な体験

 電気学会全国大会で10年ぶりに仙台に訪れました。新幹線を乗り継いでいるときに、ふと最初に宮城県に来た時のことを思い出しました。42年前(1984年)のことです。

 社会人になって2年目のゴールデンウイークの連休を利用して、夜行電車でやってきました。塩釜に到着したのは朝4時過ぎだったと記憶しています。すでに明るくなっていました。

 海岸に出て散策していると海の神様について記載されている碑が立っていました。この碑を読んで、心の中で「本当に神様がいるのであれば、何かの印を見せてくれ。」と念じました。当時、キリシタンが海で貼り付けにされて満ち潮で溺れるときに神様がいるのであれば何かの印をみせてくれ」と祈っても何も掲示が無いという「沈黙」という映画があったのに影響されたものです。

 そのような軽い気持ちで念じたのですが、朝の5時にも関わらずに大きな銅鑼(どら)の鳴る音が近くで間髪入れずに鳴りました。さすがに町の時を知らせる音であるはずもなく、やはり神様がいることを確信しました。神様を怒らせてしまったかもしれないとおののきました。この時は既に体温が低く霊的な感受性が高かったのかもしれません。

 その際に塩釜神社で無く、金華山に行かなければならないと思い、その足で、本釜石から電車で石巻に行き、宮交バスに乗り換えて鮎川港まで行きました。バスの中はちょうど学生が通学で乗っていて全く会話の方言が理解できなかったこと、くじら漁で栄えていたことを思わせる看板も覚えています。鮎川港から船に乗り牡鹿半島から金華山の黄金山神社に行き、ちょうど厄年であったので祈祷を受け、神様に無礼なことをしたことを謝りました。

 先日調べたところ、碑はすでに東日本大震災の津波でなくなっていますが、祀られた神様は金華山の黄金山神社の神様である可能性が高いことが分かりました。謝った神様は正しかったようです。

 その日、仙台近くで宿泊したはずですが全く記憶にありません。

2026年03月23日

54.ファインバブル安定化の謎を解明

 ファインバブルの謎について解明したことを2026年3月13日に東北学院大学にて開催された電気学会全国大会で発表しました。電気学会としてはマイナーな内容なので「半導体・導電泰・機能性材料(Ⅱ)」のセッションでした。それでも他の発表者を含め40名ほどの出席者がいました。

 発表のタイトルとして「静電気圧力によるファインバブル発生機構の検討」です。

 これまで直径100 nmのファインバブル(FB)が安定性して存在する理由について研究が多くされています。しかし、FBの表面が持つマイナス電荷の反発作用が圧倒的に小さく、表面張力に負けてしまうため圧縮されて30気圧で安定することから、FBの表面の水が飽和するまで空気をため込んでいるため高圧の空気の溶解を妨げて安定することなど、いろいろな説が提唱されていましたがどれも無理があると思われていて未だ謎とされていました。

 福岡大学にいたころFBを用いた研究を始めて、当然FBがどうしてできるか分かっていると思っていましたが、まだ未解明であることが分かりました。せっかく日本がFBの国際規格ISOの幹事国になっているのに分からないとは残念でした。

 このため、以前より進めていた検討を2025年2月より本格的に始めました。それまでは気泡表面にマイナス電荷が溜まっていて水中にプラス電荷が漂っているということがそれまでの通説でしたが、2025年4月にこれはあり得ないことに気が付きました。

 気泡表面にマイナス電荷が存在するならその周囲近傍にプラス電荷が補足されているはずです。そこで、マイナス電荷が存在するFBの外側にプラス電荷が指数関数的に減衰する構成で存在すると仮定しました。荷電粒子の電位は荷電粒子の周りの電界の積分で決まるため、マイナス電荷の近くにプラス電荷が存在すると積分範囲が小さく外部から観測される電位は非常に小さくなります。

 このためFBの表面に非常に大きい電荷が存在しても見かけ上、小さい電位しか観測されないことに誰も気が付かなかったようです。
上記の構成で気泡の表面張力、大気圧、気泡表面の電荷による静電気膨張圧力、気泡の内部圧力の4つの項がバランスする条件を計算により求めました。その結果、プラス電荷の存在を考えるとFBの表面電位が‐30 mVの時に計算上直径60 nmから200 µmまでの真空のFBができることが明らかになりました。これでやっとFBの謎が解明されたことになります。

2026年03月16日

53.EUでは称号で優遇される

 「52.ヨーロッパでの権威主義」で書いたようにEUでは権威を重んじます。この権威とはなんでしょうか。

 1つは博士号です。日本では博士号を持っていてもさほど利点を感じることはありません。博士号を持っていると聞いても「ほーそうですか」程度の反応です。しかし、EUでは扱いが異なります。ホテルを予約する際に称号を聞かれることがままあります。博士号を持っていると明らかに優遇されます。見晴しの良い部屋とそうでない部屋があったら見晴らしの良い部屋に案内されます。

 大学教授はさらに上を行きます。爵位を持っていたらさらに上でしょう。EUに行く機会が多い人はぜひ博士号をとりましょう。

 しかし、ホテル側の事情としてEUの人は再度来る可能性が高いのでアジアの人よりは優遇されます。博士号を持っているとうそをついても、博士号の証明を求められることはありません。

 また、権威としては、有名大学で著名な論文を多く出していることも有効です。さらに、CIGREやIECなどの国際的な委員会の議長(コンビ―ナ)になった経験があることも重要なことのようです。少し名前の知れた学者はこぞってCIGREやIECなどの国際的な委員会の議長(コンビ―ナ)になりたがります。聞いたところでは議長(コンビ―ナ)の経験は履歴書で大きなウエイトを持つものだそうです。

 

2026年03月08日

52.ヨーロッパでの権威主義

 CIGREのWGに参加していて権威のある学者には意見が正面切って言えない、いわゆる権威主義の雰囲気を何度か感じました。

 まず、IEC60060-1において上昇法による破壊電圧の試験法です。現在の2025のバージョンではどうなっているか分かりませんが、2010のバージョンで図A.3(b)の交流や直流での上昇法で平均破壊電圧を求める試験方法において、最初はU01、U02、U03と電圧をある時間(通常1分の場合が多いです)一定にして次の電圧レベルに上げていき1回目の絶縁破壊が発生した際に、2回目からはU01とU02の間の電圧である時間保持した後、次はU02とU03の間の電圧である時間保持する試験方法が示されています。

 この方法は一貫性が無く、2回目以降も最初のU01、U02、U03に合わせるべきではないかとコメントしたところ、他の委員からの反応は無く凍り付いていました。この表は会議に参加していたハウスシールド氏の提案で盛り込まれた図であることは後から知りました。当時EUで権威あるハウスシールド氏の提案に異議を申し立てるようなことはEUの人からは考えられないということが良く分かりました。

 明らかにおかしいのに変えられないのは日本でもままあることなので納得してしまいます。結局、先の提案は黙殺されて変更なく規格に盛り込まれました。

 また、レムケ元教授が新しい碍子の観測装置の発表をした際に、鉄塔に登るのは大変なのに校正はどのようにするのか、と質問した時も会場が凍り付きました。レムケ元教授からはこれから検討する旨の返答がありました。しかし、高電圧の測定の大家であるレムケ元教授に物申すとはどういうことなのかという雰囲気でした。

 この数年前にUSAの委員が、いろいろ意見を言っても聞いてくれない、面白くないから委員を辞めると言って辞めてしまったことも思い出されます。

 このような大家に対して物おじしないで意見をするところで、IECのFDISの変更を申し出たドイツに対して平気でNOと言うことが予想できたので意見を求められた可能性があります。

2026年03月02日
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