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水魚の交わり(すいぎょのまじわり)

意味:親密な交際や間柄のたとえ。水と魚のような切り離せない親密な交友。

当時、先主は新野(しんや)に駐屯していた。徐庶(じょしょ)が先主に目通りした。先主は彼をなかなかの人物だと見た。徐庶が先主に言った。

「諸葛孔明(しょかつこうめい)は眠れる竜でございます。将軍、会いたいとは思われませぬか」

先主が言った。

「連れてきてくれ」

徐庶が答えた。

「この者は会いに行くことはできますが、簡単に召し出すことはできません。将軍自らが腰を低くして訪問されるのがよろしいかと」

そこで先主は諸葛亮(しょかつりょう=孔明)の元を訪れた。都合三度訪問し、ようやく会えた。そこで人払いすると言った。

「漢王朝は傾き衰え、奸臣が国権を奪い、皇帝陛下は戦乱を避け流浪を余儀なくされておられる。わしは身の程もわきまえず、大義を広めんと思うが、知恵も技も未熟で、たびたび敗れ、今日にいたっている。しかし、志は捨てておらぬ。貴殿はどのような策をとるべきと思われるか、是非言ってもらいたい」

諸葛亮が答えた。

「董卓(とうたく)以来、天下の豪傑が次々と蜂起し、州郡を跨ぎこれを占拠する者、数えきれません。曹操(そうそう)は袁紹(えんしょう)に比べれば名も知られず、兵も少ないですが、ついには曹操が袁紹に勝つでしょう。弱者が強者に勝るのは、天の時が味方するばかりではありません。人の知略にもよるのです。今、曹操は百万の兵を抱え、天子を押さえ、諸侯に号令しております。まことこれと争うことはできません。
孫権(そんけん)は江東(こうとう)を占拠し、すでに三代を経ました。地勢は険しく、民もよくなつき、優れたの家臣がよく働いております。これは外からの助けとすることはできますが、取ろうなどと考えてはなりません。
荊州(けいしゅう)は北に漢水(かんすい)、沔水(べんすい)があり、南は海でさえぎられ、東は呉会(ごかい)に連なり、西は巴(は)蜀(しょく)に通じております。ここは戦には好都合の国。しかしながら、その主には守る力はございません。これは天が将軍に賜った贈り物、将軍にはその意志はございませんか。
益州(えきしゅう)は険阻な山に囲まれ、肥沃な土地が千里にわたって広がる、資源豊かな国でございます。かつて、高祖もこの地を足がかりに帝業を成し遂げました。劉璋(りゅうしょう)は暗愚にして懦弱。北は張魯(ちょうろ)に脅かされています。民は多く国も富みながら、民をいたわることを知らぬため、知謀才略のある士は賢明な君主を待ち望んであります。将軍は漢帝室の末裔であるばかりか、その信義は天下に聞こえております。広く天下の英雄を召し抱え、賢能の士を渇望しておられる。もしも荊州、益州を押さえ、その険しい地勢を楯とし、西は戎(じゅう)の各部族と和睦し、南は越(えつ)をなだめ、外には孫権と結んで、内には政治を整えておけば、ひとたびことが起きた場合は、上将軍に命令を下し、荊州の軍を率いて、宛(えん)、洛(らく)へ向かわせ、将軍自らは益州の兵を率いて、秦川(しんせん)へ討って出るならば、どうして民が手に手に食糧を持って将軍をお迎えせぬことがありましょうや。こうなれば、覇業はなり、漢朝も再興できましょう」

先主が言った。

「すばらしい」

これより、諸葛亮との交情は日に日に深くなった。関羽(かんう)、張飛(ちょうひ)らはこれがおもしろくない。先主がなだめて言った。

「わしが孔明を得たのは、魚が水を得たようなものだ。貴公らももうなにも言わないでくれ」

関羽、張飛はそれからは口をつぐんだ。

【三国志・蜀書・諸葛亮伝】

※先主・・・劉備(りゅうび)三国時代・蜀漢の初代皇帝
※高祖・・・劉邦(りゅうほう)前漢の初代皇帝
※劉璋・・・益州の長官


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