クリオの運命は・・・

 

 小さい頃からクルマのお仲間さん達にも可愛がっていただいた娘が、大学生になって運転免許を取得。そこでクルマの基本形とも言えるパンダ(旧型)を彼女の専用車にすることにしました。昔から本人の好きだったクルマということもありますが、そのかわいらしい容姿とは裏腹に、きちんとシフトを入れてあげないと「違う!」と率直にパンダが主張するところが運転の練習にもなります。そのおかげかどうか、シフトチェンジはけっこうスムーズにできるようで、エンストをすることはあまりありません。勝手に進んでいってしまうようなAT車の方がかえって恐いと言うほど。ただ、車庫入れはやはり苦手なようですが・・・(苦笑)。

 休みの日には主人と娘でパンダで出かけ、あちこちを練習がてらドライブすることもあります。昔からパンダを操ることが大好きな主人ですので、愛弟子とも言えそうな娘の上達ぶりを話す表情はとても幸せそうです。うちのパンダの持病である出だしが不調な症状も、主人が詳しいかたに相談したり、ネットで調べつつ試行錯誤して調整したりしているうちにずいぶんとおさまってきました。

 娘の初心者マーク時期が終わり、次は息子が練習する番だねと話すようになってきたその頃、今度はクリオの調子がおかしくなってきました。16年乗ってきて10万キロを超えたあたり、前々から多少のATF漏れがありましたが、それがかなり気になるようになってきて、クルマ屋さんに持っていくたび、ある程度の対処はしてもらっていました。しかしついに動作に影響が出始めました。Lowが入らなくなってしまったのです。最初はATFや添加剤を足したりしてしばらくは普通に走れていたのですが、次第にそれも効かなくなり、上り坂をあがって行くのも不安に思うように。乗り心地が良く、私にとってはいちばん安心して運転できたクリオのはずなのに、運転時にはだんだんとストレスが溜まっていくのを自覚するような事態に。やはりエンジンにも負担がかかるのでしょう、マフラーから白煙がモクモクと出るような症状も見られるようになりました。当然クルマ屋さんに相談してはみたものの、部品がなかなか見つからず、あったとしてもかなり高額となりそう。その年は息子の大学受験も控えていましたから、優先順位は自ずと決まっています。古いクルマに時間とお金をかけている場合ではありません。とても気に入っていたクリオを手放したくない、でも修理する手立てもない・・・。本当に自分の家族のように思ってきたクリオをいよいよ手放すその時が来たのかと動揺しました。

 この年、子供ふたりともが大学に通うこととなるにあたって私も久々に仕事に就くことに。決まった職場は車で通勤せざるを得ない場所なので、仕方なくクリオに替わるクルマを探すことにしました。エクスは主人が通勤に使っていますし、パンダもありますが、これはさらに古いクルマなのでいつどうなるかわかりません。ということで少々気が重い中、ネットなどで主人があれこれ探してくれていました。いろいろ探していくうち、昔購入ギリギリまでいったシトロエンのシャンソンが売りに出されているのを発見、少ない走行距離できれいな感じです。それをまず候補に入れながら、しばらく他のクルマも平行して探していました。

 そんなある日、一本の電話が・・・。いつもお世話になっているショップから、私のと同型のクリオが入ってきたとの知らせでした。さっそく見に行かせてもらったところ、色も全く同じ、5ドアのクリオPh3が置いてあります。聞くところによると、そのクリオの女性オーナーさんはご主人のお仕事のご事情で泣く泣く手放されたとのこと。私にもその残念なお気持ちは痛いほどよくわかります。1型クリオって一見地味ですが、オーナーになった人だけがわかる何とも表現しがたい良さがあるんですよね。

 それにしても何というタイミング。販売終了から10年以上は経っているクルマです。販売期間そのものが短く、さほど人気車でもないので、中古で残っているものはほとんど無いなか、身近な場所での出物。さぁ、ここで選択肢が増えました。そのクリオにまるっと乗り換えるか、機関部分を換装するか・・・。選択肢が増えたことはとてもありがたかったけれど、ここでまたまた悩むことに。全く同型であるがゆえに、余計に迷うということもあるんだなとわかりました。というのも、普通に乗り換えた場合、ふとした瞬間に視界に入ってくるほんの些細なこと(例えば小さな傷や遣れ具合だとか、前オーナーさんが手を加えてある箇所だとか)で、慣れ親しんできた自分のクリオとは違うんだということを改めて認識するんだろうなと想像してしまうのです。また、ミッションやエンジンなどを換装した場合、私のと同様に年数も走行距離も多いですから、ATである以上、いずれ近いうちにまた同じような症状が出ることが容易に予想されます。果たしてそこまでする必要があるのか・・・。

 一方、シャンソンの方も気になっていました。今回は特にATに拘っていたわけではないけれど(むしろMTの方が安心ですが)、条件としては手頃な値段と大きさでドアが5枚、できれば左ハンドルであることが希望です。前述のとおり、同型クリオについて迷っていたこともあり、いっそのこと全く別のクルマの方が諦めがつくかもと、正直なところシャンソンの方に少し気持ちが傾いていました。そこで「じゃあとりあえず、見るだけ見てみようか」とそのショップに問い合わせたのですが・・・すでに売れてしまっていました。シャンソンは小型ながらも1,600ccで私のクリオよりも排気量は多く、どんなふうに走ってくれるかちょっぴり楽しみでもあっただけに、少々残念な気も・・・。なんだか我が家って、シトロエン車に縁がありそうで無いような感じです。。。

 でもこれですっきり気持ちが決まりました。他に良さそうな出物もすぐに見に行けるような所にはなく、半ば消去法のような選択になってしまいましたが、クリオのミッションとエンジンを同型と換装してもらうというのが一番納得できてお金をあまり使わずに済む方法だという結論にようやく達しました。主人は「このままではすぐに2台のPh3を一度に失ってしまうことになるけれど、1台は生き残ることになるんだから、結果的に“繋ぎ”ではあっても、Ph3愛好家のおかあさんとしては保存しておかなければね。」と言ってくれました。ドナーになってもらう同型クリオのオーナーさんには申し訳ないような気持ちを抱えつつも、「活用させてもらえるならこの機会を大事にしよう・・・」そう思いました。