子供たちと車、そして・・・

 男性の方々にはわかりにくい事ですが、妊婦にとってサンク(たぶんフランス車全般)のシートの座り心地は本当にありがたいものでした。ただでさえ身体が重く、疲れやすくなっているその時期は、その柔らかさとホールド感でどれだけ癒されたことか。こうして、私のお腹の中で既にその感覚を味わっていたかどうかはわかりませんが、産まれたときから身近にラテン車とかかわってきた二人の子供たち(姉と弟)。車について、今日はご機嫌だとか、明日は入院だとか、物心つく以前から擬人化した言葉を親から聞かされてきたので、愛車たちのことをまるで家族の一員のように思ってくれているようです。ちょうどペットをかわいがっておられるご家族みたいなものですね。特に弟の方は興味の尽きることがなく、車の名前を覚えるのが早いこと。ラテン車なら、特徴的な一部分をパッと目にしただけでその名を言い当てることができ、今では私より詳しいぐらいです。姉の方も、「わたしは弟ほど詳しくない」と言いながらも、その年齢の普通の女の子よりは多分よく知っているほうだし、絵の好きな彼女は車の特徴を捉えて描くこともできます。そんな子供たちや愛車との生活はとても幸せです。が、小さな子供たちをかかえながら、私一人でメカ的に不安のあるサンクで出かける時、なんとかなるさと思いつつも、少し心の負担を感じていました。当時は子供たちもまだ乳幼児で、しょっちゅう熱を出したりしていましたから、遠くの病院へ連れていくことも多かったのです。そんなとき、もしも困ったことになったら、と思うとやはり心配になってきます。夏場はエアコンもあまりきかず、自分は我慢できても、子供たちにとってはかなり苦痛だろうと思うと、サンクに乗るのを控えてしまう時もありました。 

 
 3回目のサンクの車検を迎える年になった頃、そんな私の気持ちを察して、夫の方からきりだしました。「もう、母さん(私の事)もサンクも十分がんばったと思うよ・・・。」子供たちの事だけでなく、その前の年はサンクの調子が続けて悪かったり、部品調達にかなり時間がかかったりして、ほとんど満足に乗れていなかったのです。出費もかさんできました。サンクの事は大好きだけれど、所詮車は走るため、移動するための道具です。そうでなければ意味がありません。いつまでも飾っておけるミニカーとは違うのです。そうやって自分自身を納得させて、私も夫も、サンクにかわる次の車を探す決心をしたのでした。