ルノー家の血筋

 あれこれ思い悩んだ末、ウチにとってフランス車がいなくなるのはやっぱり寂しいので、ようやくサクソを選ぶ決心をしました。F.B.M.の存在も捨てがたいですしね。とはいうものの、プントのあの強烈な印象がまだ脳裏に焼き付いているのも事実でした。

 
 そんな折、夫がふと目にした車の雑誌に、ルノー・クリオ(旧型)のインパネまわりの写真が載っていました。夫はそのとき、なにか大切なものを発見したかのようにそれを私に見せて言ったのです。「ほら、これはまさしくサンクだよ!」・・・そうなのです。サンクの後継者として新しくクリオ(ルーテシア)が誕生したわけなのですが、その内装はサンクの雰囲気をそっくりそのまま受け継いでいたことをそこで初めて知りました。マイナーチェンジを間近に控え、新車の出ていなかったクリオでしたから、その内装まではしっかり確認していなかったのです。大好きなサンクの面影を持っていたクリオ。これはマイナーチェンジ後のクリオを見てからでも遅くないという結論に達し、Tさんやシトロエンのディーラーさんには申し訳なかったのですが、もうひと夏サンクに頑張ってもらうことにしました。


 夏も終わりに近付き、そろそろ雑誌等でも紹介され始めた新しいクリオ(フェーズ3・・・旧型クリオの最終版)。その写真の姿を見て、以前のクリオの方が格好イイと思ったのが私の正直な第一印象でした。デザインに関して言えば、以前のクリオは男性っぽく、ちょっとだけボクシーなところがウリだった(私はそう思う)のに対し、今度のクリオは全体のラインが優しくなって、私なんかが乗るといかにも女性っぽくなってしまいそうです。国産車のデザインに近付いてしまった感じも残念でした。しかしラテン車のデザインの場合は特に、実車をこの目ではっきり見ないことには何とも言いがたいという経験が数多くあるので、実際に会えることを楽しみにしていました。そして内装もしっかり確かめ、試乗してみなくては!!


 ある程度近くて信頼できるディーラーを熱望していた私たちはクリオの件をきっかけに、以前から気になっていたものの、なぜか足を踏み入れていなかったあるお店で幸福な出会いをしました。そのお店のKさんは、多くを語らずとも車好き、ルノー好きが自然と伝わってくるようなかたでした。経験も豊富なようです。嬉しいことに、工場の方はさらに我が家に近い場所にあり、速い作業で明確な料金を提示してくれるのです。もちろん技術的にも信頼できそうです。そのお店で、輸入されたばかりの真新しいクリオと出会うこととなりました。


 一目見たそのとき、なぜだか懐かしい感じがしました。まあ、雑誌やカタログ等で毎日穴があくほど見ていたせいもありますが。確かに写真で最初に思ったとおり、前のクリオより個性的な雰囲気が薄れたような印象は完全には拭い去れませんでしたが、逆にその分、さりげなさが感じられてなかなか捨てたものではありません。ワクワクしながら室内を覗いてみると・・・多少の変更はあるものの、ちゃんとサンクの面影を引き継いでいたのです!無理にプラスティックを高級に見せようとしない、このそっけないインパネまわり。天井の内張りの感じやルームライトなども。そして一番私を感動させたのは、やはりルノー特有の乗り味でした。ハンドルに伝わるしっとりとしたドライブ感。「ああ、これは確かにサンクの子だ。」と思わずウルウル・・・ときてしまいました。