またいつか会おうね。そして、ようこそ我が家へ!

 これで私の心は決まりました。結局の所、どうやら私の身体はルノー車の乗り味を求めていたようです。な〜んだ、それだけ悩んでおきながら、最後はもとのさやにおさまっただけなんだ!と笑ってやってください。ホント、なぜか遠回りをしてしまったのでした。でもいろいろ見て悩んだことは決してムダではなかったと思います。私にとってその時は決定打に欠けていたといえども、それぞれのラテン車の魅力はとても新鮮で素敵なものばかりだということがよくわかったからです。最後まで迷ったプントやサクソの他にも細かい条件を抜きにすれば、前にも述べたプジョー306はやっぱり洗練されているし、刺激的なランチア・イプシロンなどにもクラクラっとなってしまいます。またルノーの中にも、クリオの他にトゥインゴというユニークな車があります。そんなクルマたちを見てきたからこそ、自分に本当に合っているものを見つけることもできたような気がします。・・・たかがクルマだということはよくわかっているつもりですが、やっぱりラテン車は楽しい!


 秋もだんだん深まり、こまごまとした手続きも済んで、いよいよ納車の日がやってきました。真冬ほどではないにしろ、やはり日本の真夏も得意とは言えないサンクでしたが、その年はほとんど故障もなく、私たち家族に良い思い出を提供しつつ、まるで覚悟をきめたかのようによく頑張ってくれました。クリオを買うことにしたそのお店のKさんは、私たちの予想以上にサンクを高く見積もってくださり、金銭的に助かったというのはもちろんのこと、私たちのサンクへの愛情を理解してくださったのだと受けとめ、深く感謝したのでした。そして最後のドライブを堪能するためお店までサンクで行き、クリオを引き取ることにしたのですが、意外だったのはそれまで我が家のなかでは車に対して比較的クールだった娘が、行く途中で急に泣き出したのです。前々からサンクと別れることは十分話してあったはずでしたが、当時まだ4才の娘には実感が湧いていなかったかもしれません。それとも我慢してたのかな?つられて弟の方も泣きだし、車内はしんみりしてしまいました。でも、そんなに沈んでいたら今度やってくるクリオがかわいそう!と気持ちをきりかえ、笑顔でクリオを迎えたのでした。


 ついに我が家にやってきたRENAULT Clio RN ('97年式 5dr、エピセアグリーン)。日本での名はルーテシアというので、最初はそのロゴが後ろについていましたが、丸っこい字体に加えてそんな名前がかわいらしすぎる気がして、本名のClioのロゴに付けかえました。クリオと呼んだほうが私も子供も言いやすいですしね。こうしてみると、なぜか我が家はカタカナにすると3文字の車ばかり続いています。パンダ、サンク、クリオ、そして後に結局は夫の車になったプント・・・。ま、どーでもいいことですネ。


 さてクリオとの生活が始まったわけですが、さすがに旧クリオの最終版ということもあって、伝統的なルノーの乗り味に加え、熟成感のようなものがジワジワと感じられます。といっても、マイナーチェンジ前のクリオに乗ったことがないのではっきりしたことはわかりませんが。特にウチのもうひとつの車であったパンダはおもちゃっぽいところが特徴なので、完成度の違いがよくわかると夫は言います。また、外見は個性的な部分が薄れたと感じていましたが、いざ、多くの国産車が並ぶところにポンと入ると、これがやっぱり違うんです。車にぜんぜん興味のない人が見れば気づかないと思うけれど。クリオと生活していくうちにどんどんと惹かれていくのがわかります。クリオを選んだことは私にとって間違いではなかったという思いが更に強くなっていきます。そしてこの安心感。今のところメカそのものも調子良くて嬉しいのですが、さらにルノーが好きで、良心的なお店のスタッフさんたちが味方になってくれることがとてもありがたいのです。 


 そういえば実はこのクリオを買う少し前に、約1年後ぐらいにはすぐにフルモデルチェンジしたニュークリオがやってくるという話を聞きました。それは確かな情報でしたが、それを待たずに旧型クリオ最終版に決めたのは、やはりサンクの面影を残したこのクリオが好きだったことと、まだ見ぬニュークリオが全く別のものになってしまいそうで寂しかったからです。実際、あのしっとり感とシートの良さは引き継いでいますが、本当に新しくうまれかわったニュークリオ。すっかり賢くなって、ちょっと試乗しただけで運転の下手な私でも上手くなったような錯覚をおこしそうでした。デザインも斬新(?)で私たちの興味を十分に惹きつけるできばえでした。その証拠に、都会とは言いがたく、ラテン車のお店がほとんど見当たらない我が家の近辺でさえ、複数のニュークリオを時々見かけるようになりました。ヤナセ系、日産系の販売店の力もあるかと思いますが、どうやらルノー車の良さがこのニュークリオの登場によって世間にも認められ始めているようなのです(と私は思いたい)。それでもなお私は自分が選んだ旧型のクリオに愛着を感じ、ニュークリオを待たずに買ったことを後悔しませんでした。