はじめまして -自然塾設立のご挨拶-

我々人間は自然から多くの恩恵を受けています。
それは食べるための物質的恩恵だけではなく、自然の美しさや
偉大さに触れたときの感動や、居心地のよさといった精神的恩恵もあるでしょう｡
どちらも人間が人間らしく健全に生きてゆくためには欠かせないものです。

しかし､４６億年というとてつもなく長い歴史のある地球上に､
ほんの少し前に誕生した人間が､工業的発展の裏側で､
この地球や地球上の自然界に大きな爪あとを残してきました。
その中には､自然が本来持つ治癒力の到底及ばないほど
大きなダメージも多くあったわけです。

一方､子ども達は、自然とあまり関わらない生活様式になってきていることもあり､
自然に接する体験が極めて少なくなっている反面で､インターネット等を通じ
情報は溢れ､実体験がなくても"知った気になる"ことができる時代になっています。
五感を使い知ることこそ本当の意味で知ったことになるハズのものが、
デジタルで美しく処理された画像や音声だけのバーチャルな情報で
知った気になれてしまいます。
このようなバーチャル体験で知ったものには、そのものへの愛おしさや
思いやりの心というものは育みにくいのではないでしょうか。

人間にとってかけがえのない自然に､これ以上のダメージを与えないために、
そして自然に対し責任の取れる行動ができるようになるために、
我々人間は自然に愛しさと思いやりの気持ちを持つことが大切であり、
そのために自然の中で実体験を通じた本物の自然を知ることが
必要不可欠と考えています。

『本物』の体験は､"知っているつもり"だけであった色々なことに対して
新たな発見を与え､自然の営みや生き物の知恵に気づく絶好の機会だと考えています｡
そんな場を少しでも多くの子ども達に提供できればという思いから
自然塾設立に至りました｡

風光明媚で穏やかな三河湾の海や､面積の半分以上を占める山や里山の存在する
自然豊かなここ三河の地で､参加する子供たちと一緒に色んなことに気づき､驚き､
感動する時間を共有したいと思います｡

2006.6.1　杉本　達哉