愛知県碧南市 「いつか来た道」と懐かしさを感じる御堂前 「妻薬師堂」を訪ねる

大浜南部へようこそ!

妻薬師堂(つまやくしどう)

由緒不明の謎多き存在 日なたの匂いがする一日を猫と共に愉しむ贅沢

米屋さん、木枠の引き戸

<大浜下の切で最も心落ち着く場所、妻薬師堂界隈。乳母車を押すおばあちゃん達の交差点である妻薬師堂前には、不思議と微笑みある人達が集まってくる。古き良き時代の遺物が大切に扱われ、懐かしい日なたの匂いがする> 「大浜下の切の道は全て薬師堂前に通じる」と断言したい。 現代の車社会では分かち合えない世界がこの妻薬師堂前にはある。現役を退き、余生を過ごすおばあちゃん達は、経験にものをいわせ、大浜のあらゆる道を網羅している。 おばあちゃん達は我が物顔で道路を占拠する自動車という存在が嫌いだ。 故に自動車の通られない道、つまり幅の狭い路地を好んで使う。そのような観点からおばあちゃん達の好む路地を「乳母道」と総称する。 その乳母道が各地より集まってくる地点が妻薬師堂前なのである。互いの乳母車を囲み、言葉を交わすおばあちゃん達。 今や存在さえ危ぶまれる「大浜言葉」がふんだんに織り込まれる会話。若いこと、新しいことが決して善ではないこの場の空気に、 幼き頃に嗅いだ日なたの匂いが甦ってくる。

赤灯籠のなか、お地蔵さん

<寛文7年(1667)創建と伝えるが、詳しい由緒は解明されていない妻薬師堂。興味を惹く沢山の仏像を拝見し、奥行き85センチの本堂縁でポカポカ陽気を楽しむ> 大浜には寺院にまつわる2つの謎が存在する。そのうちの1つがこの妻薬師堂である。 昭和4年発行の大浜町誌によれば、鳥山牛之助(松江代官)の妻が難病を患い、17日間祈祷したのち、治癒した故に「妻薬師如来」と呼んだという。 本尊である薬師如来は秘仏で、固く厨子の中へ収められている。脇侍である日光・月光の菩薩、十二神将をはじめ、 阿弥陀如来・釈迦牟尼像・釈迦涅槃像がある。他に右眼を潤した弘法大師坐像、庚申講が行われていた事を示す青面金剛力士像等、数多くの仏像が安置されている。 この妻薬師堂は南向きに面し、物静かな場所に位置している。奥行き85センチ、踏み台20センチ高と条件の良い本堂縁に腰を下ろし、 じっくりと大浜下の切の雰囲気を楽しむ。往時の時間の流れを想像させる世界である。

ヘボト自画像ヘボトの「如是我聞(にょぜがもん)」

歴代の湊橋らんかん

「十王堂・六角堂・橋の欄干」

妻薬師堂の西に隣接する「十王堂」。由緒不明だが、元禄2年(1689)再建という棟札がある。称名寺と何らかの関わりがあるという。 冥界で亡者をさばく13人が鎮座し、天秤には人の生首が載るおどろしさ。 赤い灯籠は「六角堂」といい、内部に木製のお地蔵様が6体並んでいる珍しいもの。 昔は妻薬師堂の敷地よりもっと南にあり、この六角堂を囲んで念仏踊りが盛んに行われた。 十王堂と生け垣に挟まれた場所には、堀川に架かる湊橋の欄干が3つ保存されている。 また生け垣の縁にある土台の石は、湊橋に使われていた石材であり、薬師堂西にある『米金商店』の御主人が引き取り、配置したもの。

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