☆ 雑談〜ある日ある時ある場所で〜
その6“奉納射会”
9月末日、とある神社の弓道場にて・・・
日奈;「悠美ー、がんばってねー!」
信乃;「てかげんしてやれよ〜(^^;」
剣吾;「しかし良く試合に出る気になったなあ」
来夢;「誠二さんのお祖父さまに頼まれたんだって」
日奈;「なんて?」
来夢;「ここ最近、いっつも他の地区の人が優勝してるから・・・」
信乃;「別にいいじゃん。そんなの」
来夢;「それでね、隣町の神社の神主さんに馬鹿にされたって…」
仁美;「あの人達が仲悪いのって結構有名でしょう?いつも何かとはりあってるって」
日奈;「なるほどね〜。それでうちの地区で一番上手な悠美に頼みに来たのね」
来夢;「お姉ちゃん、ここの道場でいつも練習させてもらってるから、断りきれなかったんだって」
信乃;「悠美も義理堅いからな。しかし・・・」
剣吾;「これでまた誠二のやつ、悠美に頭が上がらなくなるな(^^)」
誠二;「余計なお世話です」
剣吾;「おわっ!・・・なんだいたのか」
日奈;「大変ねー、誠二君も」
誠二;「まったく、おじいさまにも困ったものです」
信乃;「おい、あそこにいるのって、そのおじいさまと仲悪いっていうやつじゃないか?」
日奈;「どこどこ?・・・あ、あの頑固そうなお爺さん?」
誠二;「そうです。まあ、見た目ほど頑固でもないですし、少なくとも悪い人ではないですよ」
剣吾;「おめえのじいさんとは単に馬が合わない、ってとこか」
日奈;「ねえ、その隣にいるのは誰なの?」
誠二;「ああ、飛び入りで参加申し込みされた方で、“高峰 翼”っていうらしいです」
仁美;「・・・!あの人、いえ、あの方は人間じゃありません!」
剣吾;「なにぃ!じゃ、俺達と同類か?」
信乃;「なんか怪しいな・・・ちょっと探ってみるか・・・」
日奈;「でももうじき試合はじまっちゃうよ?」
信乃;「・・・しょうがない、試合が終わるまで黙ってみてるか」
剣吾;「何企んでるかしらねえけど、特に人に危害加えるようなことはしないだろ」
仁美;「少なくとも、悪意は感じられません。大丈夫じゃないですか?」
日奈;「そうと決まったら、悠美の応援しましょ♪」
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来夢;「結構うまいね、あの人」
剣吾;「“人”じゃないからな(^^;それにしても悠美と互角か・・・」
仁美;「どちらも妖術は使ってませんよ。あれはあの方の実力です」
信乃;「こいつは長くなりそうだな・・・」
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日奈;「・・・まだ続くの・・・」
信乃;「・・・もう日が暮れるぞ・・・」
誠二;「・・・さすがに悠美さんにも疲れが見えてきましたね・・・」
剣吾;「・・・いいかげんに決着がつかねえかな・・・」
仁美;「・・・気を抜いた方が負けですね・・・」
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来夢;「あっ!相手の人のはずれたよ!!」
信乃;「やったぜ、悠美の勝ちだ!」
剣吾;「ようし、今日はお祝いだー!」
日奈;「でも、相手の方もすごかったね。なんで最後はずしたんだろ?」
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翼 ;「優勝、おめでとうございます」
悠美;「ありがとう、君もなかなかすごかったよ。・・・君、普通の人間じゃないね?」
翼 ;「あ、やっぱり分かります?実はそうなんですよ(^^)」
悠美;「やっぱりね。アタシらと同類ってことか。・・・でもなんで最後はずしたの?」
翼 ;「実は僕、鳥目なもんで。夜になるとほとんど目が見えないんですよ(^^;」
悠美;「なんだ、そうかぁ。じゃあ鳥の妖怪なんだね?」
翼 ;「はい、正体は妖鷹です」
悠美;「なんでこの試合に出たの?」
翼 ;「僕、射撃で狙いをはずさないのが自慢でして。こちらに弓の得意な方がいると聞いてぜひ勝負したくて来たんですよ」
悠美;「そうだったんだ。じゃ、、また明るい時にあらためて試合しない?今日も楽しかったしさ!」
翼 ;「はい、ぜひお手合わせ願います!」
その7“雪女の隠れ里”
お正月も終わったころ、喫茶“Nights”にて・・・
剣吾;「いらっしゃいませ・・・ってなんだ、誠二と信乃か」
信乃;「お前なあ、新年最初のあいさつがそれか?」
誠二;「おまけに客に向かってそういう対応してていいんですか?」
剣吾;「お客っていうのはちゃんと代金を払う人のことを言うんだ、覚えとけ」
信乃;「あれ、そういえば今日は来夢ちゃんは?」
剣吾;「来夢なら仁美と温泉に行ったぞ」
誠二;「二人でですか?」
剣吾;「悠美はお前の祖父さんの神社で巫女さんの仕事がまだあるから行けないんだと」
誠二;「大変ですねえ、彼女も」
剣吾;「おまえ、他人事みたいに言ってる余裕あるのか?」
誠二;「どういうことです?」
剣吾;「お前が日奈と信乃にくっついて雪女の隠れ里に行ったりするから、ずっと神社の方で人手が足りなかったんだぞ」
信乃;「そりゃ大変だ。あとで悠美に何言われるか分かんねえぞ、誠二(^^)」
誠二;「・・・(言葉も無し)」
剣吾;「ま、後できっちりしぼられとくんだな。それより、日奈はどうしたんだ。一緒じゃないのか?」
信乃;「ひさしぶりだからもう2,3日向こうにいるってさ。俺達は用事があったから先に帰ってきたけど」
剣吾;「ふ〜ん。で、雪女の里はどうだった?なんかおもしろいことでもあったか?」
信乃;「あやうく氷漬けになるところだったよなあ、誠二くん(^^)」
誠二;「何言ってるんですか。あれは事故です。だいたい私が覗きなんてするわけないでしょうが・・・」
剣吾;「お前、覗きはいかんぞ、覗きは。・・・で、何覗いたんだ?(^^)」
誠二;「覗いてないって言ってるでしょう。ちゃんと話を聞きなさい」
剣吾;「ふっ、どうせ入浴中の日奈でも覗いたんだろ」
信乃;「おお、良く分かったな」
誠二;「だから違うっていってるでしょうが!・・・星香さんって知ってますか?」
剣吾;「前に聞いたことがあるなあ。確か二人いる日奈の従姉のうち、姉さんのほうが月乃さんで、妹が星香さんだったよな」
信乃;「その星香のいたずらにひっかっかったんだよ。日奈が入浴中のところへ『ここが客人用の浴室よ』とか言われて」
剣吾;「それで入っていったら実は女湯で、日奈が入ってて、即座に氷斬鞭でしばかれた上、氷漬けにされそうになった、と」
信乃;「まるで見てきたかのように状況が分かってるじゃないか(^^)」
剣吾;「何、なんとなくそんな気がしただけだ(^^)」
信乃;「正確には女湯じゃなくて雪女の不凍冷泉って言うんだけどな。氷の体で入っても凍らない水なんだよ」
誠二;「星香さんのいたずらだと分かってもらえなかったら、きっと今ごろ氷漬けで置物になってましたよ」
剣吾;「いやあ、お前のことだから月乃さんや星香さんに手を出してしばかれるくらいのことは予想してたけどなあ」
誠二;「失礼な。しませんよ、そんなこと」
信乃;「と、いうかできなかったんだよな。先に日奈に言われてたから」
剣吾;「何て?」
信乃;「『ナンパなんかしてたら無事に帰れる保証はしないからね』って」
誠二;「あそこの女性達は、ナンパとかうわきとかにはかなり厳しいのだそうですね」
信乃;「まあ、星香は比較的おおざっぱだけど、月乃さんはすごく嫉妬深いからなあ。日奈だってやきもちやきだし」
剣吾;「雪女ってのは男が女に対して抱く恐怖の念から生まれたっていう説もあるくらいだからな」
信乃;「そういえば日奈の場合、約束破った時のおしおきはすっごく恐いからなあ」
誠二;「日奈さんのおしおきが恐いのは今回良く分かりましたよ・・・」
剣吾;「・・・お前、頭の上がらない女性がだんだん増えてないか?(^^)」
※ゆうが夜剣神社の巫女になったのは4月のことで、この時はまだ夜剣神社に正式な巫女はいません。
その8“雪乙女、来襲!?”
一月某日、喫茶“Nights”にて・・・
日奈;「ただいま〜!」
悠美;「やあ、日奈。ひさしぶり!」
日奈;「今年もよろしくね」
剣吾;「よう、日奈。帰ってきてたのか」
日奈;「うん。それでね、連れがいるんだけど・・・」
星香;「よ!はじめまして、日奈の従姉の星香ってんだ。よろしくな!」
月乃;「は、はじめまして・・・月乃といいます・・・」
悠美;「はじめまして!私は美月悠美。悠美でいいよ。これはここのマスターの剣吾」
剣吾;「・・・これはないだろ、これは・・・」
星香;「えっと、悠美に剣吾くんだね」
月乃;「・・・よ、よろしくお願いします・・・」
日奈;「二人とも私が普段住んでるところが見たいって言って、連いてきちゃったの」
星香;「一週間ばかし世話になるから、よろしくね」
剣吾;「おお、お手やわらかにな。そういえば日奈、里帰りしてる時に誠二のやつを痛い目にあわせたんだって?」
日奈;「あ、あれは星香姉が変なことするから!」
星香;「いや〜、あれだけ見事にひっかっかってくれるとは思わなくてさ〜」
誠二;「こんばんわ、何かにぎやかですね・・・っていいいっ!(思わず3歩下がる)」
悠美;「あ、誠二じゃない。来たばっかりで何帰ろうとしてんの?(^^)」
星香;「よ〜、誠二くん。ひさしぶりだねえ、元気してた?風邪ひいてない?」
誠二;「もともと妖怪は風邪ひかないでしょう・・・それよりなんでここにいるんです?」
星香;「何、ちょっと遊びにね。しばらくやっかいになるから、よろしく」
誠二;「(しばらく身を隠そう・・・)」
日奈;「誠二くん、その・・・怪我は大丈夫だった?」
誠二;「は、あ、ええ。あれくらいなら平気ですよ。鍛え方が違いますから」
月乃;「あ、あそこまでぼろぼろになっても平気なんですか・・・?ほとんどぼろきれみたいでしたけど・・・ 」
星香;「3年くらい使い込んだ雑巾みたいだったよな(^^)」
剣吾;「・・・そこまでやったのか、日奈」
日奈;「だ、だっていきなり、その、えっと・・・もう、知らない!」
星香;「いや〜、日奈の氷斬鞭もひさしぶりに見れたよ」
悠美;「そういえばさ、星香さんや月乃さんも氷斬鞭使えるの?」
星香;「ううん、氷斬鞭は日奈だけだよ。あたいら3人とも得意な術が違うんだ」
日奈;「月乃姉さんは天候操作が得意で、星香姉の得意技は“氷槍陣”だよね」
剣吾;「月乃さんの天候操作は分かるけど・・・星香さんの氷槍陣ってどんな術なんだ?」
星香;「地面から氷の槍が何本も飛び出すんだよ。“つららまい”ともいうんだけどね」
日奈;「月乃姉さんの天候操作もすごいんだよ。雲一つない晴天だったのを一気に吹雪にできるんだもん」
月乃;「そ、そんな・・・たいした術じゃないです・・・身を守ることもできないし・・・」
星香;「ま、月乃姉ちゃんは争いごと嫌いだからね」
悠美;「ま、妖怪にとっては戦うのが本分じゃないんだもん。ぜんぜん気にしなくてもいいよ!」
実は【氷変形】の妖術で氷の盾くらい作れるので、月乃も身を守るくらいはできます。
威力は低いですが【冷気放射】もちゃんと使えます。
(実は星香、日奈より使える妖術の種類は多かったりします)
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