☆雑談〜ある日ある時ある場所で〜
その9桜日記その1“咲き始めて”
1月末日、喫茶Nightsにて・・・
日奈;「ねえ、舞夜ちゃんって今どこにいるのかな?」
信乃;「ん?ああ、多分この時期は南の方だろうな」
来夢;「舞夜さんなら今沖縄にいるって電話があったよ。もう桜が咲いてるんだって」
日奈;「ふ〜ん、もうそんな季節なんだね」
剣吾;「まだこのあたりはこれからが一番寒い時期だぞ」
信乃;「そうだな。こっちで咲くまでまだ2ヶ月くらいあるし」
来夢;「またみんなでお花見しようね」
剣吾;「そうだな、はやく暖かくなるといいな」
日奈;「わたしはまだ寒くてもいいけどな〜(^^)」
剣吾;「おいおい(^^;」
その10“雪降る夜に”
2月初めのある夜、占いの店“千里眼”にて・・・
仁美;「さて、今日はこれくらいでお仕事終わりましょうか」
翔 ;「はい、仁美さん。それじゃあ受付けの戸締りしてきますね」
仁美;「今日は一段と寒いし、あとでNightsで暖かいものでもいただいていきましょうか?」
翔 ;「はい!ちょっと待っててください、すぐに閉めてきます!」
仁美;「そんなに急がなくてもいいわよ。それより、ちゃんと全部戸締りするのよ」
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翔 ;「うわあ、寒いっ!」
仁美;「ほんとう、空気が刺すように冷たいわね」
翔 ;「早く行きましょう。雪が降ってきそうですよ」
仁美;「そうね。でも、降ってきたら日奈ちゃんはきっとよろこぶでしょうね」
翔 ;「こちらではあまり降りませんからね。日奈さんはどちらで生まれたんでしょうか?」
仁美;「雪女の隠里は東北の山の中に入り口があるの。私は日奈ちゃんの氷の門を通っていったんだけど」
翔 ;「きっと雪で白くて、すっごくきれいなところなんでしょうね」
仁美;「そうよ。一年中雪で覆われていて、絶対に融けない氷の鏡なんかもあったわ」
翔 ;「雪女のみなさんがすんでらっしゃるんですよね?」
仁美;「ええ、日奈ちゃんの従姉の月乃さん、星香さんにはこの間会ったわね」
翔 ;「はい、お二人とも優しい方でした。星香さんがなかなか放してくれなくて困りましたけど(^^;」
仁美;「誠二君が『身代わりができて助かった』って言ってたわよ(^^;」
翔 ;「僕が行くまでずっと遊ばれていたみたいですから…それで、他にはどんな方が?」
仁美;「雪女は日奈ちゃんの一族だけね。もともと一つの隠里にそれほどたくさん住んでいるものじゃないから」
翔 ;「一番えらいのは雪の女王さまですね」
仁美;「そう。日奈ちゃんのお祖母さまね。他には、雪ん子たちが一緒に住んでいるわ」
翔 ;「雪ん子?雪女とは違うんですか?」
仁美;「雪女と雪ん子は違う妖怪なのよ。確かに雪女の子供も、小さい頃は雪ん子と見分けはつかないけど」
翔 ;「あ、それ、星香さんに聞きました。大人になるまでは人間と同じ速さで大きくなる、って」
仁美;「雪ん子っていうのは、生まれてからずっと子供の姿の一族なのよ」
翔 ;「ええっと、座敷童子と同じですね」
仁美;「そんな感じね。それで、今は大人の男の方は里には一人もいないのよ。雪ん子の男の子はいるけれどね」
翔 ;「雪女と雪男は全然違う種族だそうですね。あれ?でも日奈さんのお父さんは半妖怪だって聞きましたよ?」
仁美;「日奈ちゃんのお父様の凍夜さんは、異国の氷の精と人間の間に生まれたの。今は事情があって行方不明らしいけど…」
翔 ;「どこへ行ってしまわれたんでしょうね…?」
仁美;「どうやら、日本にはいないらしいわよ。…あ、着いたわよ。早く入りましょう」
翔 ;「うんっ!僕、暖かいココアが飲みたいなぁ。…あれ?なんか降って…あ、雪?!」
仁美;「あら、ほんとう。降ってきたみたいね。積もったら来夢ちゃんも一緒に、雪だるまでも作りましょうか」
その11桜日記その2“Under the cherry blossom”
4月初め、夜剣神社にて・・・
剣吾;「よし、それじゃあ今年も毎年恒例のお花見会をはじめるぞ!ではまず乾杯から…」
信乃;「お〜い、悠美、こっちつまみがないぞ」
悠美;「あ、ちょっと待って。今持っていくから」
日奈;「舞夜ちゃん、とりあえず一杯どう?」
舞夜;「あ、ありがとう。それじゃ私からも…」
駆狼;「あれ?仁美さん、その子は?」
仁美;「そういえば翔くんに会うのは初めてだったわね」
翔 ;「はじめまして駆狼さん、舞夜さん。去年からこちらでお世話になっている天津 翔といいます」
舞夜;「こちらこそよろしく。礼儀正しくていい子ね」
駆狼;「よろしく。と、いってもあんまり僕達はこっちにはいないけどね(^^;」
来夢;「誠二さん、この唐揚げ私が作ったんですけど、どうですか?」
誠二;「どれ?…うん、なかなかおいしいよ。よくできたね」
来夢;「お姉ちゃんに教えてもらったの。初めてだったからちょっと心配だったんですけど」
信乃;「おい、剣吾。早く来ないと食い物なくなるぞ」
剣吾;「…お前ら人の話聞けよ…」
仁美;「まあまあ。こっち空いてるから座ったら、剣吾くん?」
剣吾;「あ、ああ。じゃ、とりあえず一杯…」
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誠二;「今年は咲くのが遅かったですね」
舞夜;「3月も寒い日が続きましたから。桜も咲く準備をして、暖かくなるのをずっと待ってたんですよ」
駆狼;「南の方でも、なかなか咲きませんでしたからね」
悠美;「最近になって暖かくなって、やっと春らしくなってきた、って感じね」
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翔 ;「来夢さん、すっごくおいしいです、このおにぎり」
来夢;「ありがとう。いっぱい作ってきたからどんどん食べてね」
仁美;「うふふ、でもあんまり無理して食べちゃだめよ、翔」
剣吾;「なに、食べ物がたくさん食べられるのは…」
仁美;「健康な証拠、でしょ?でもね、限度ってものがあるわよ(^^;」
翔 ;「あ、いえ、これくらいなら全部食べられます」
剣吾;「おい、俺の分も残しとけよ」
来夢;「心配しなくても、剣吾さんの分はここにまだあります(^^)」
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日奈;「せ・い・じ・く〜ん、ちゃんと飲んれますか〜?」
誠二;「わっ、日奈さん、も、もちろんちゃんと飲んでますとも」
悠美;「いや〜、しっかり酔っ払ってるわ」
日奈;「しっつれ〜ね〜。よっれなんかないも〜ん♪」
剣吾;「…誰だ?日奈に飲ませたのは?」
舞夜;「あ、私だ。ごめん、日奈ちゃんがお酒に弱いのすっかり忘れてた」
駆狼;「…ほんとは知ってて飲ませただろ…」
舞夜;「あら、分かる?(^^;」
駆狼;「付き合い長いからね。それより日奈ちゃんが飲まないように見張るはずの人は?」
翔 ;「見張る人?信乃さんですか?」
来夢;「信乃さんならさっきからずっと一升瓶抱え込んで寝ちゃってるけど…」
仁美;「こっちが先に潰れちゃってたのね(^^;」
日奈;「おら〜、あたしがついでやっれんらから、はやく飲めぇ〜!」
誠二;「ひえぇ〜、ちょっと、のんびり見てないでとめてくださいよ〜(^^)」
悠美;「…ねぇ、誠二。あんたちょっとよろこんでない?」
誠二;「実はさっきから日奈さんの胸が腕にあたって…はっ」
悠美;「一生飲んでろ!」
剣吾;「ま、へたに手を出すと危ないし、あっちはあっちで飲ませとこう」
誠二;「そんな〜」
日奈;「こら〜、ちゃんと飲みなしゃい〜!」
淡い桃色の桜の木の下で、年に一度の宴会の夜は続く・・・
信乃;「ZZZ...」
剣吾;「顔に落書きでもしてやろか、こいつ?(^^;」
その12桜日記その3“桜前線北上中”
4月中旬、夜の北陸自動車道上にて・・・
舞夜;「そろそろ青森の“さくらや”に挨拶にいかないとね」
駆狼;「弘前公園の桜はまだこれからだな」
舞夜;「見頃は4月の終わり頃かな?まだ大丈夫よ」
駆狼;「透華さん、今年もきれいなんだろうなぁ」
舞夜;「わたしとどっちがきれい?」
駆狼;「そ、それはもちろん…」
舞夜;「冗談よ。透華さんってほんとにきれいだもん」
駆狼;「桜の木霊ってみんなきれいだもんな。この時期は特にみんないきいきしてるし」
舞夜;「あとどのくらいで青森まで行ける?」
駆狼;「スパイラルブーストも使って全力走行するんなら、あと1時間もかからずに行けるよ」
舞夜;「そこまで急がなくてもいいわよ(^^;夜明けまでには着けるように行きましょ」
駆狼;「OK、じゃ、ほんのちょっとだけとばしていくぞ〜」
“さくらや”は青森県・弘前のネットワーク、透華はそこに属している枝垂れ桜の木霊です。
角川スニーカーG文庫の「ガープス・妖魔夜行・データ集・闇紀行」で紹介されています。
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「シェアード・ワールド・ノベルズ 妖魔夜行」「シェアード・ワールド・ノベルズ 百鬼夜翔」
は角川スニーカー文庫より発売中のシリーズです。