☆雑談〜ある日ある時ある場所で〜
その13“操り人形”
5月中旬のある夜、喫茶Nightsにて・・・
信乃;「ちーっす」
日奈;「こんばんは〜♪」
悠美;「いらっしゃい!待ってたわよ」
信乃;「なんか来夢ちゃんに呼ばれてきたんだけど・・・」
来夢;「あ、信乃さん。こっち、こっち☆」
信乃;「来夢ちゃん、とりあえず持ってきたけど・・・これでいいかい?」
剣吾;「何持ってきたんだ?」
信乃;「模型。ロボットでもなんでもいいから持ってきて、って言われたから」
誠二;「・・・なんです、これ?犬ですか?」
信乃;「犬じゃない!狼だ!」
翔 ;「あ、ゾイドですね。僕も持ってます」
仁美;「何なの、それ?」
翔 ;「機械生命体という設定の模型で、中にモーターやゼンマイが入っていて動くんですよ」
信乃;「そのとーり。こいつはコマンドウルフ・寒冷地仕様。その名もウィンターウルフだっ!」
日奈;「・・・お兄ちゃん、何か最近こういうのにはまってるらしくて・・・」
来夢;「信乃さん、それをカウンターの上に置いて」
信乃;「ん。・・・これでいい?」
来夢;「うん♪ちょっと見ててね。・・・・・・歩いて!」
剣吾;「おお、勝手に歩き出したぞ!」
日奈;「まるで生きてるみたい☆」
翔 ;「ゼンマイで動かしてる時より、動きがスムーズですね」
来夢;「えへへ、次はダッシュ!」
誠二;「ふーん、なかなか機敏な動きをしますね。見事なものです」
信乃;「すごいな。動かないはずの関節まで動いている。プラスチックとは思えない動きだ」
来夢;「おすわり!」
仁美;「へえ、ちゃんと座ったわ。かしこい犬ね」
信乃;「・・・だから犬じゃないって・・・」
日奈;「すごいすごい!来夢ちゃん、いつこんな術覚えたの?」
来夢;「えっとね、ずっと前から練習してたんだけど、この間やっとできるようになったの」
剣吾;「物を生きているように操る術か。物と会話できる来夢ならではの術だな」
悠美;「来夢ったら、今度の隠し芸大会はこの術で人形劇やるんだって」
誠二;「夏のNights恒例隠し芸大会のことですか?」
日奈;「う〜ん、わたしも考えておかないと・・・」
信乃;「また氷斬鞭で大根の千切りでもやるか?(^^)」
日奈;「今年はタマネギの微塵切りにしようかしら」
剣吾;「あんまり大差ないぞ、それ・・・(^^;」
その14“世間知らず”
十数年前の夜、大都会の片隅で・・・
日奈;「お兄ちゃん、さっきから同じところを歩いてるような気がするんだけど・・・」
信乃;「う〜ん、よく気付いたな。実は俺もそう思ってたんだ」
日奈;「・・・道に迷ったのね・・・」
信乃;「そうとも言う」
日奈;「偉そうに言わない!俺に任せろとか言ってたくせに〜!」
信乃;「しょうがないだろ、前に俺が人間の町に出てきてたのは50年も前のことなんだから」
日奈;「言い訳はいいわよ〜。・・・それより、どうするの?」
信乃;「とりあえず、もう一度そのあたりを探してくるから。お前はここで待ってろ」
日奈;「ネットワーク“居酒屋・のれん”かぁ。どんなところだろ?」
信乃;「看板は出てるっていう話だし、探せば見つかるだろ」
日奈;「早く見つけてきてね」
信乃;「ま、がんばってみるよ」
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信乃;「お〜い、場所がわかったぞ〜」
日奈;「あ、意外と早かったね」
信乃;「・・・なんだ、その両手に抱えたマッチやティッシュの山は・・・?」
日奈;「んとね、ここで立ってたらいろんな人がくれたの」
信乃;「ただでくれたのか?親切な人もいるもんだ」
日奈;「他にもいろんな人とおしゃべりしてたから、そんなにつまんなくなかったよ」
信乃;「へぇ。どんな話してたんだ?」
日奈;「初めに声かけてきた人は、『彼女、一人?良かったら俺達と遊ばない?』だって」
信乃;「それで?」
日奈;「待ってる人がいるの、って断ったら『ちっ』とか言ってどっか行っちゃった」
信乃;「何がしたかったんだ・・・?」
日奈;「その次はね、『お姉ちゃん、いいバイトがあるんだけど、どう?』って男の人が」
信乃;「バイト?仕事の紹介もしてくれるのか。いい人が多いんだな」
日奈;「今はちょっとダメなの、って断ったら、『興味があったら連絡してね』ってマッチくれたよ」
信乃;「また時間があったら行ってみようか?」
日奈;「同じような人が何人も来て、そのたびにマッチやティッシュくれたの」
信乃;「それでこんなにたくさん持ってるのか」
日奈;「あと、『雑誌に載る気ある?』とか『映像デビューしてみない?』とか言う人が名刺くれた」
信乃;「映像関係はまずいなぁ。そっちは断らないと」
日奈;「立ってるだけで色々御世話してくれるなんて、飽きないとこだね、人間の町って」
信乃;「よし、じゃあネットワークに挨拶に行くぞ」
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時間は流れ、舞台は喫茶Nightsへ・・・
日奈;「ってな感じかな、わたしが初めて人間の町に来たときの話は」
剣吾;「・・・世間知らずってのは怖いもんだな・・・」
信乃;「言うな。俺も日奈が断ってくれて心から良かったと思ってる」
日奈;「さすがにもうそんなのにひっかかったりしないよ!」
剣吾;「最近はもうちょっと誘いが巧妙になってるからな。気をつけたほうがいいぞ」
仁美;「あら、剣吾くん。よく知ってるみたいね。もしかして・・・」
剣吾;「なななななにを言う。は、話に聞いたことがあるだけだ」
悠美;「まだ何にも言ってないって。なに慌ててんの?(笑)」
その15“ハッピーウェディング”
残暑もすぎた秋のある日、喫茶Nights1号店にて・・・
信乃;「あのさ、俺、里に帰るから」
剣吾;「ふ〜ん。で、いつまで帰ってるんだ?」
信乃;「多分こっちには戻ってこないんじゃないかなぁ」
剣吾;「そうか、気をつけてな。・・・ちょっとまて。今何て言った?!」
来夢;「信乃さん、今戻ってこないって・・・?なんで?!」
信乃;「いやぁ、それがさぁ・・・」
日奈;「何照れてるのよぉ」
悠美;「照れてる?何、それ。どういう意味?」
剣吾;「気になるなぁ。教えろよ、信乃」
信乃;「実は、俺、結婚するんだよ」
悠美;「ええええっー-!!!」
剣吾;「お前、結婚の意味知ってるんだろうな?」
信乃;「どういう意味だ、それは」
来夢;「しししし信乃さんが・・・けっけっけっこんん??」
悠美;「来夢、ちょっと落ち着きなって。で、相手は誰なの?」
日奈;「・・・月乃姉さんよ」
誠二;「あの月乃さんが?!信乃にはもったいない!」
信乃;「失礼な奴だな。・・・お前、いたのか?」
仁美;「月乃さんといえば、日奈さんの従姉の方よね」
翔 ;「前にこちらに遊びにきてましたね。ちょっとのんびりしてるけど、すごく優しいんですよ」
信乃;「・・・いたのか、二人とも・・・」
剣吾;「しかし、急な話だなぁ。いつ決まったんだ?」
日奈;「この夏、色々どたばたしてたでしょ。うちの里も例外じゃなくって」
信乃;「里に人間が紛れ込んでくるようになったんだよ」
仁美;「そういう話、あちこちで聞くわね。隠里が実体化する、って話もあるわよ」
信乃;「それで、結界の入り口で見張ることにしたってわけ」
悠美;「・・・ぜんぜんよく分からない。それと結婚とどうつながるの?」
日奈;「結界の入り口に家を立てて、そこで暮らすんだって」
信乃;「引っ越してきた新婚夫婦ってわけさ。見張り役としては言い考えだろ?」
剣吾;「どこがいい考えなのかよく分からん。が、1つの方法ではあるな」
悠美;「それじゃ、結婚は演技なの?」
日奈;「違うよ。この案が出たのは二人の結婚が決まってからだもん」
誠二;「いつのまにそんな相談してたのやら・・・」
日奈;「夏の戦いの後、お兄ちゃんが月乃さんにプロポーズしたんだって」
信乃;「長(雪の女王。日奈や月乃の祖母)に相談したら、それなら結界の見張りもやれ、ってことになって」
仁美;「なるほどね。で、日奈ちゃんはそれに賛成なの?」
日奈;「まあ、ね。お兄ちゃんと月乃姉さんがお互いに好意をもってたのは知ってたし」
来夢;「そ、それで、もしかして、日奈さんも帰っちゃうんですか?」
日奈;「わたし?ううん。まだしばらく里に帰るつもりは無いよ」
悠美;「新婚生活を邪魔するほど野暮じゃないわよねぇ」
日奈;「と、言うか、二人を見てるとこっちが恥ずかしいのよね(笑)」
信乃;「日奈を一人で置いていくのは気がかりなんだけど・・・」
日奈;「もうっ、いつまでも子供あつかいしないでよ〜」
剣吾;「日奈なら一人でも大丈夫だって。俺達もいるしな」
誠二;「そうです。日奈さんのことは私に任せて、安心してさっさと帰りなさい」
信乃;「・・・お前には任せたくないぞ、兄として」
ゆう;「安心してください、日奈お姉さまには私がいますですぅ!」
日奈;「ゆうちゃん、いつからいたの?!」
後日、ある秋の吉日のこと。夜剣神社にて信乃と月乃の婚礼の儀が執り行われた。
Nightsメンバーの他、隠れ里からやってきた雪女の一行が参列。
その日、この地方は一年で一番の冷え込みになったらしい・・・(笑)
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