<出会い>
高校2年生のとき。友人の「良かったぞ」で思わず読まされた『竜馬がゆく』。もともと歴史
は好きだったが、文庫本で8冊もあるような長編は読んだことがなかったので、読みきれる
かどうかすら不安だった。しかし、読み始めたらあっという間であった。驚愕である。その後、
30を過ぎてから『竜馬がゆく』を再度読み直した。高校生−社会人といったポジションの違
いこそあれ、そこに「少年の心」を感じずにはいられない。
<真骨頂>
司馬のジャンルは広く深い。個人的には、戦国期・幕末を扱ったものが好きだ。『街道をゆ
く』に見られるように、自分の足で歴史の舞台を踏み、考察を加えていくことによって、遠い
過去の人間模様が生き生きと蘇るのである。そこに登場するのは、後世に名を残した人ば
かりではない。一介の武士であったり、時代の歯車にさえなれなかった刺客であったり。
<帰らぬ人>
平成8年2月、この世を去る。司馬の訃報を知ったのは、翌々日の朝刊の記事であった。メディアの露出も少ない
人なので、彼の肉声を聞いたことはほとんどない。その素顔も分からぬままに、帰らぬ人となった。その後、司馬を
追悼する書が多く出されたので、いくつかを読み、彼の生き方・考え方をはじめて垣間見ることができた。司馬の想
「くま」所有の
司馬関連書籍
いは、その小説の中で強烈なメッセージとして残されている。
<司馬と私>
司馬遷を敬慕し、「司馬遷に、遼(はるか)に及ばない男」という意味でつけられた
ペンネーム。私もまた、自分自身の人生観を形成する司馬遼を、敬愛してやまない。
世に司馬遼ファンは多く存在する。彼についての知識も人に誇れるほどではない。
ただただ彼の作品に魅了された人間として、その作品を生涯読み続け、人間として、
日本人としてのあるべき姿をそこに見出したい。